第10話 Side - 12 - 8 - りぃんちゃん -

Side - 12 - 8 - りぃんちゃん -


こんにちは、リーゼロッテ・シェルダン12歳でございます。


前回は「呪いの刃事件に巻き込まれてしまいましたぁ!、身体を傷物にされたのです!、とっても痛かったのです!」、みたいな事をお話ししましたね。


この時、皆さんは思ったでしょう、「リィンちゃんって誰だよ?」って。


今日は私の大切なお友達、リィンちゃんについてお話ししましょう、聞きたくなくても勝手に話すのです!、なんと彼女はこの国の第一王女様なのです!。


私が初めてリィンちゃんに会ったのは7歳の頃。


お父様と国王陛下が仲良しという事で、その日は友人同士、最近仕事で忙しかったから久しぶりに子供達を連れて遊ぼうかという話になって、両親と私、そしてコナンザは王城に行き、陛下のプライベートなお部屋でお茶をしていたのです。


陛下側は王妃様とリィンちゃん、2人の王子殿下は騎士団と剣の練習をしている方がいい!と言ったらしくて欠席でした。


陛下と王妃様は会ったことがあるのですが、リィンちゃんとは初対面、私はお部屋に居る黒髪のとても可愛らしい女の子に見惚れてしまったのです!。


「・・・・艦⚪︎これくしょんの朝潮ちゃんだぁ・・・黒髪サラサラで綺麗!」


第一印象はそんな感じ。


お父様と国王陛下、お母様とコナンザ、それと王妃様はお互い話をされていて、残った私は王妃様の横で佇むリィンちゃんと少し距離を置きながらじっと観察していました。


「かわいいなぁ、・・・お・・お友達になれるかな?」


そんな事を考えながら・・・。


・・・・観察に夢中になるあまり、私は無意識のうちに少しずつリィンちゃんと距離を詰めていたのか、気が付いたらリィンちゃんのすぐ目の前にいたのです。


リィンちゃんと目が合います、いけないいけない、人見知りだから目を合わせるのが恥ずかしいのです!。


私はリィンちゃんの胸の辺りに視線を移します、うん、この年齢だとまだつるぺたですね、つるぺたはいいぞ・・・私と一緒につるぺたのまま居るのです、貧乳仲間になるのです・・・。


「・・・あ、あの・・・」


私がそんな事を考えているとリィンちゃんが声をかけてきました、何でしょう、人見知りな癖に距離を詰め過ぎてどう対応したらいいか困ってしまいました、リィンちゃんの方が背が高いので上目遣いで見上げ首を傾けました、お友達になれたらいいな、こうすれば私でも少しは可愛く見えるかな?。


「・・・・」


あれ、リィンちゃんが固まってしまいました、もしかして私の顔が怖かったのでしょうか?、うぅ、転生してもお友達できないのかなぁ・・・・。


「・・・・こ、これで許して・・・・許してくだしゃい!」


よく分からない事を言いながらリィンちゃんは自分の胸に付けていたアクセサリーを引きちぎるように外して私の手に握らせました。


許す?・・・、何を許すのでしょう?、私はリィンちゃんとお友達になりたかっただけなのです、これはもしかして友情の印にくれるのかな?、意味が分からなさ過ぎて思わず無表情になりました、いけない、笑顔笑顔・・・。


「・・・いいの?」


くれるのかどうかの確認を一応しておきます、笑顔で。


「どうぞ・・・お納めくだしゃい!」


リィンちゃんは何故か涙目になっています、私はどうしていいか分からず頭を撫でようと手を伸ばしたら・・・・。


「私ぃ!、ちょっと急用を思い出しましたぁ!、お父様!、お母様!少し席をはすしましゅね!、し・・・失礼しましゅ!」


突然リィンちゃんがお部屋を出ていったのです、そして戻って来る事はありませんでした。







それからしばらくして、新年に開かれた国王陛下主催の夜会で再びリィンちゃんと会いました。


その時は何故か以前から目を付けられて、しつこく私を虐めてくるヴィンス第二王子殿下に絡まれているところを助けてもらったのです!。


ヴィンス・モトリー・ローゼリア、14歳、この国の第二王子殿下で私に何かと絡んでくるクソ野郎です、理世だった頃のお母さんがよく聞いていた、モトリー・クルーというバンドで歌っている人によく似た金髪野郎、元は黒髪なのにかっこいいからという理由で金色に染めているアホなのです。


私は若い男の人が震えるほど怖いのですが、ヴィンス第二王子殿下はまだ幼いながらも体が大きく、私の嫌いな人種「陽キャ」なのです、その日は壁際に居た私を見つけて何かと大声で威圧してきました。


私はちょうどお手洗いに行きたかったのに話がなかなか終わらず、もう限界っていう時に彼が私の両肩を強く掴んだのです、それで理世が最期の時に味わった怖い体験がフラッシュバックして、お・・・お漏らしをしてしまったのです!。


それに誰よりも早く気付いたのはリィンちゃんでした、私が夜会の席で恥をかかないように、躓いたフリをして私の横のシャンパンタワーを倒し、私達にかける事でお漏らしを誤魔化してくれました、そして泣きじゃくる私をお部屋に連れて行きお着替えまで用意してくれたのです!、これは大恩人と言っても過言ではないのです!。


部屋にはお着替えを手伝ってくれたメイドさん、護衛の女騎士様、そんな人達が居る中でリィンちゃんは「私の不注意でシャンパンをあなたにかけてしまい申し訳ありませんでしたぁ!」と言って謝罪してくれたのです。


何という素晴らしいお方なのでしょう!、あくまでもあれはリィンちゃんの不注意で、断じて私がお漏らしをしたのではない!って意味だと思うのですが、皆さんの前で謝罪してくれた事で私のお漏らし事件は闇に葬られたのです。


王女様でとても偉い立場なのに私なんかに気を遣ってくれる優しい性格、私のお友達第一号はこの人以外考えられません!、人見知りなどとは言ってられないのです!、なんとしてもこの人にお友達になってもらうのです!、そう思い私は護衛の女騎士様だけを部屋に残してリィンちゃんと2人にしてもらい、自分でも驚くほどの勢いで私のことを話したのです!。


顔が怖いから皆から怖がられている事、人見知りで他人と話をする時うまく言葉が出ない事、訳あって若い男性が震えるほど怖い事、まだ一人もお友達が居ない事、リィンちゃんとお友達になりたい事・・・。


そんな事を私なりに一生懸命説明しました、最後には涙と鼻水で顔がひどい事になっていましたが・・・・。


「いいよ、私からもお願いします、是非私とお友達になってください!、私のことはリィンって呼んでね、リゼちゃん!」


この時、私に初めてのお友達が出来たのです!。


嬉しくて嬉しくて、もう声をあげて泣いてしまいました、そんな私をリィンちゃんは優しく抱きしめてくれたのです。






ここまではとても良い話っぽいのですが・・・。


あの後、リィンちゃんとは凄く仲良くなりました、親友と言っても良いくらいお互いの事をよく話し、よく笑い合ったのです。


家族以外でここまで親しくなった人はリィンちゃんしか居ません。


でも、そうしているうちに気付いてしまったのです・・・・。


表面上は優秀で完璧に見えるお姫様、リィンちゃんがとんでもなくポンコツである事に。


リィンちゃんは王族として国の為に何か出来る事をしようと毎日一生懸命頑張ってお勉強しています。


礼儀作法も、ダンスも、毎日頑張っている良い子なのです、でもリィンちゃんはとても不器用で、あまり運動神経も、頭も良くないのです。


分かってないのに、人に心配させまいと、立派な王女殿下に見えるようにと、分かったフリをするのです!。


王様曰く「リィンたんは分かっていない事を分かってるように振舞う天才」らしいのです。


「ダメじゃん!」


リィンちゃんが色々とやらかすから周りのフォローがとても大変なのです。


例えば隣国の王様と気付かず、その人物と内容を全く理解してないのに延々と長時間会話を続けた結果、「リィンフェルド殿下はとても博識でいらっしゃる!」、と言わしめた事がありました。


何その才能、怖いよリィンちゃん・・・。


私は何度、「ダメだこいつ早く何とかしないと」って思った事でしょう。


でも優しくて思い遣りがあって、友達の私をとても大切にしてくれる大親友なのです。


・・・さて、いかがだったでしょうか?、少しでもリィンちゃんの事を知ってもらえたと思うのです。


あ!、あそこにちょうどリィンちゃんが居るのです!、いい機会だからリィンちゃんにも何かお話ししてもらうのです!。


「リィンちゃーん!」

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