どうでもいいひと

 自宅で彼女に刺されて入院していた先輩と喫煙所で鉢合わせたので、いつの間に退院したのだろうとか病み上がりで煙草吸ってて大丈夫なんだろうかとか刃傷沙汰の直前に貸してた小説の単行本は無事だろうかと思いつつ、無難に近況や彼女との諸々を聞けば、先輩は僅かに目を眇めながら「俺んこと好きになるやつなんてろくなもんじゃない」と咥え煙草で嘯くので、なら嫌いな人はどうですと問えば「そんなもんに興味を持ってやる意味がない」と煙を吐くのだが、この人からすると自分はどちらの枠に仕分けられているのだろうと、俺は墓穴のように黒々とした目を煙越しに見ながら考える。

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