もう一本、どうですか

 煙草を切らして吸い足りずにいるときにいつも「良かったらどうぞ」と一本だけ寄越してくる後輩に、そろそろ結構な本数を借りているような気がしたので何か欲しいものはあるかと尋ねれば「もうちょっと貸してから考えます」と値踏みでもするように右目だけを細めながら煙を吐くので、このまま借りが積み上がっていったらろくなことにならなそうな確信じみた予感こそあるが、一体こいつは俺から何を取り立てるつもりなんだろうと、未だに銘柄の分からないやたらと甘い煙にまとわりつかれながら俺は後輩の横顔をぼんやりと眺めている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る