anywhere, otherwhere, Nowhere.

「年末年始ぐらいは顔を見せてくれ」という兄の頼みに応えて訪れた実家には相変わらず何もなく、変化といえば仏間に両親の遺影以外が増えたくらいで、実家に残った兄も去年と何も変わらず、都会に逃げた割には目立った成果も出せずにいるを責めるでもなくつまらない特番とぎこちない世間話の合間に新年は訪れ三が日も過ぎ、都会に帰る俺を駅まで送ると乗せられた車内で、もうこの交差点を左折すれば駅に着くというところで引っかかった信号が変わるのを待ちながら「このまままっすぐ走ればさ、お前も俺も帰んなくて済むね」と曖昧な声音で兄が呟いた一言にどう答えるべきかが分からず、俺は雪に塗れて赤々と光る信号機を見つめている。

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