新年、紫煙、真意

 年始祝いの宴会を頃合いを見て抜け出し二階へ向かえば、暗い部屋で開け放した窓の側に座り込んで煙草を吸っている叔父がいたのでくすねた酒瓶とコップを手に隣に座ると、「三淵の伯父さんは今年までだよ」「笹裏の兄ちゃんは風呂場のもんを始末しないと足が溶けるぞ」と親族について呟き、俺はこの呟きが幾らかの間をおいて必ず実現することをこれまでの経験から知っているのだが、なぜそんな予言じみたことができるのかは知らないし、そもそも年始祝いの夜にしか会ったことのないこの人を叔父さんと呼んでいる理由も俺には思い出せないが、叔父さんは静かな新年の夜の中で紫煙を燻らせながらその黒い目を鎌のように細めてこちらを見ている。

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