来たるべき■■に備えて

「悪意も敵意も有象無象虫みたいにその辺を飛び交ってるんだけど、機関に頼るのも申請が難儀だし結局自分の身は自分で守るしかないんだよな」と二ヶ月ぶりに大学で見かけた先輩はそんなことを一方的にまくしたててから、突然声を潜めて「じゃあこれ家の庭に埋めな。お前だけ特別、どうせみんなは助けらんないからさ」とフォークをひどく深刻な顔をして差し出すので、とりあえず受け取ってしまったのだけども、帰宅してから先輩卒論とか就活とか辛かったんだろうかと鞄から取り出したフォークの先に艶やかな蝉の抜け殻が刺さっていて、これは助かったのかそれとも手遅れなのかの判断が俺にはできずにいる。

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