だからその手を離した
夢を見た。
家族旅行で一度だけ行った遊園地、その観覧車に乗っている。ゴンドラの扉は開いていて、そこから落ちかかり宙吊りになっている父親が俺の手を捕らえている。父は蒼白な顔をして「離さないでくれ、頼むから見捨てないでくれ」と俺の手に縋っている。
その瞬間、握られた俺の右手の甲に焼きついた攣れた星座のような火傷痕と煙草の熱さを思い出し、縋りつく手を思い切り振り払うと父は悲鳴も上げずこちらをまっすぐに見て落ちていった。
次に見たのは見慣れた安アパートの天井で、耳元で鳴るアラームを止めてから、俺は父を地獄に落としたのだとどうしようもなく理解してしまった。
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