　旅行先で電車が来るまでの時間潰しにと適当に入った喫茶店で手渡されたメニューには、コーヒー（六五〇円）とメロンクリームソーダ（四五〇円）などの定番商品の名前の合間に差し込まれるように五つ上の兄の名前が四〇〇円の値段と共に並んでいて、テーブルの傍らにはやけに背の高いウェイターが棒のように突っ立って俺を見下ろしているしカウンターのマスターはカップを磨きながらにこやかにこちらを見つめているので、メニュー越しに机に置かれた銀色の灰皿を睨みつつ俺は何を注文するべきかをいつまでも迷っている。