素晴らしいあの頃

 毎夜夢に出てくる青年は首が取れかけている上に右腕も盛大にねじ折れているので一目で死人だということが分かるのだけども、傷だらけの顔で「クソ暑い日に学食のかき氷を奢ってくれたの忘れてません」だの「サークルの飲み会で終電逃したら泊めてくれましたよねあれ俺すげえ嬉しかったんです」とどうやら大学時代の思い出じみたものを話しかけてくるのだが、俺自身としては確かに覚えはあるが誰にでも行っていたような事ばかりなので、そんな話をされたところで候補を絞れるわけもなくその上口元までずたずたになったこいつが誰なのかを思い出せるわけもなく、夜ごと語られる思い出話を聞くたびに微かな罪悪感に苛まれている。

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