この夏も命日

 始発まで寝かせろと夜中に突然部屋に転がり込んでくるしいきなり映画観に行こうぜと連れ出すし今日は飲むぞと俺が翌日に必修科目の授業を入れている日に限って誘いをかけてくるようなどうしようもない先輩がいつの間にかサークルどころか大学でも見かけなくなり、夏になる頃に人伝いにどうやら事故って死んだらしいという噂が流れてきたが俺にはその真偽を確かめるすべも何もなく、顔を合わせていた喫煙所でいつものように煙草に火を点けても先輩の声もやたらと甘い煙の匂いもじろりと俺を睨む横顔でさえぼんやりとしか思い出せず、吐き出した煙は晴れた夏の空にただまっすぐ上がっていく。

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