追い抜きざまに流し目ひとつ

 友人との飲み会の帰り、夜風に当たりながら自宅に続く坂道を登っていたら、背後から何かを転がす音がしたかと思うと足元を生首が縦に回転しながらまっすぐに登っていったので、意外なほどの速度と回転の中でも一瞬も逸らされることなくこちらを見ていた黒々とした目に呆然としていたのだが、その隙を突くように真横からビジネススーツの首の無い胴体が左右によろめきながら俺を追い抜き、どうにか二三歩先まで進んでから精魂尽き果てたとばかりにぐったりと座り込んだまま肩を上下させて動かなくなってしまったので、俺はとりあえず声ぐらいは掛けるべきかどうかを躊躇している。

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