同場異怪

 大学の友人たちと飲んだ流れで心霊スポットだと噂される廃墟に行き順当に怖いものを見たので、深夜営業のファミレスに逃げ込み他の連中の話を聞いている間にどうやら俺だけ皆のように右腕がどうしようもなく絡まっている黄色いワンピースの女の子ではないものを見ていたことに気づいたが、そんなことを言い出したら場が盛り下がりそうなので黙っているのだけれども、ひと気のない入口近くの真っ暗な大窓に張りついてすごい形相で瞬きもせずに俺たちの方を見ている男はアロハの陽気なハイビスカスの模様まであの廃墟で見たときと全く同じなので、俺は心霊体験でさえ人と同じようにできないのだと落胆しつつ、薄いコーヒーを啜る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る