夜明けまで

 帰り道、歩道橋の側に頭から爪先までべっとり真っ赤な男が突っ立っていたので、その場は素知らぬ顔で通り過ぎ、自宅に駆け込んでから今からでも通報しようかと玄関先で立ち尽くしているとごんごんと背後の扉が派手な音を立てて揺れ、部屋へ逃げ込めばカーテンの隙間から赤い生首だけがこちらを覗いていたのでこれは警察とか無意味だと直感して、こういうのは夜が明ければ消えるはずだと酒と映画で時間を潰して日の出まで粘ったのだが、玄関は一定のリズムで叩かれ続け首も朝陽が差し込むカーテンの隙間を上下しているので、外に出たら危険なのは分かっているが、それはそれとして本日の出勤時刻も刻々と迫っている。

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