皆はこう呼んだ、■■(任意の名称を入力)

 家飲みで酒が切れたのを幸いと買い出しついでに近所の心霊スポットに行ってきますと宣言して出て行った後輩三人が買物袋を手にひどい顔色で帰ってきたので、なんか出たかと聞けば「ヤバい部屋があって」「片付いてんのにヤバくて」「壁に殴り書きがあって、それ見てヤベえって逃げて」「ニノミヤシゲコって書いてあって」「フジキリコだよ」「違えよオガワハナコだろ」と口々に言うのだが、名が呼ばれるたびに真っ暗なベランダに人影が続々と立ち現れてはぶるぶると首を振っているので、こいつらが正しく名前を覚えてしまっていたらヤバかったんだろうなと思いつつ、俺はぬるい缶ビールを片手に怯える後輩たちと増え続ける人影を眺めている。

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