梱包から拘束まで幅広くご使用頂けます

 サークルの飲み会で泥酔するまで飲んだのは俺が悪い。一人暮らしの後輩の家にのうのうと転がり込んだのも俺が悪い。そのままろくに礼も言わずに眠り込んだのも全く俺が悪い。

 だからといって目が覚めたら手足は動かせないし、よく見ればガムテープでぐるぐる巻きにされているし、後輩は隣でスマホを構えてなんだか申し訳なさそうに笑っているなんて状況になっているのは予想も理解もできなかったわけで、いくら俺が悪かったとしてもここまでの目に遭うことはないんじゃないだろうか。

 そう思った途端に足元のクローゼットから執拗に扉を引っ掻くような音がすることに気づいてしまって、どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだと叫ぼうとして口元をべたりと覆ったガムテがどうしても剥がれず、テープの粘着力と強度も侮れないなと感心している間にも、クローゼットの扉は軋みを立ててゆっくりと開いていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る