好奇心八割、残りの二割

 土曜日の深夜一時、安アパートの薄っぺらいドア。細かな傷にまみれた扉の中、鍵がゆっくりと回っていく。

 チェーンが音もなく伸び切り、隙間から夜が零れる。

 十秒、全てが静止する。強く吹く風の悲鳴と遠くの夜を往く微かなエンジン音だけが流れ込む。

 また静かにドアは閉まり、鍵は爪を立てるような微かな摩擦音と共に回転する。


 入り込もうとしたものは言伝一つ残さずに去っていった。


 そんなことが続いて三ヶ月。今日もまた同じ時間に目の前でじりじりと回り始めた鍵を見つめながら、俺はこのチェーンを外したらどうなるのかという好奇心に胸を焙られて、亀裂のように開いたドアからはらわたじみた夜が覗くのを待っている。

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