柱の傷はあのひとの

 骨まで灼けそうな日射しが眩い初夏の日に先輩の家を訪ねれば、兄だという男に仏間に通され、「そちらの柱の傷が一昨年の背比べ、こちらの畳の傷が去年の親子喧嘩、あの梁の傷が今年です」と名所案内のように説明してから振り向いた顔は微かに笑っていて、俺はその笑顔の作り方が仏壇に飾られた遺影の先輩にどうしようもなく似ていることに気付いてしまう。

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