第5話 彼

わたしは一人暮らしを満喫した。


仕事帰りに食事に行ったり、

エステに行ったり、

デートもした。


そう、わたしには40歳の頃から付き合っている同じ会社の後輩で6つ歳下の彼がいる。


一度プロポーズされたけど、その時は子育てと仕事に忙しくてそんな気持ちになれなかった。


彼はそんなわたしの気持ちを理解してくれ、今では公私共にいいパートナーだ。


子どもたちがいなくなってひとりになった時

『一緒に住まないか』

と提案されたけど、わたしは断った。


彼のことは大好きだ。

でも…


彼の前では女でいたい!


たぶん、それが『うん』と言えなかった理由…


汗だくで掃除や筋トレしてる姿を見せたくなかったし、仕事でイライラしている時には会いたくなかった。


彼の優しさに甘えてまた自分勝手なことを言った。


いつか自然と一緒にいられる日がくるかもしれないし、こないかもしれない。


でも、今はひとりでいたいから。


『ありがとう』

『住みたくなったら押しかける!笑』

わたしは言った。


『気が変わってなければいいけどな!』

彼は笑った。


なんて素敵な人なんだろう。

そして

わたしよりもずっと大人。


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