時間が巻き戻せるなんて、聞いてません。もう一度初めからは辛すぎます。

@junna22

第1話

 6月の花嫁は、幸せになれると言うけれど

今日の天気は警報でも、出るのでないかと

思われるぐらいの大雨が、降っていた。


 天気が良ければガーデンの方にもなど、いろいろと挙式イベントも考えてると聞いていたが、この天気では無理だろう。


 さぞがっかりしている新郎新婦を思えば気の毒にも思うが、あくまで他人事で内容よりも、なんとかホテルまで辿り着いた安心感と、帰りの交通機関が雨に影響されず運行されてるのかと言う事の方が気になっていた。


「おめでとう!!」

新郎新婦が、参列者からライスシャワーを

受けているのを少し離れた見ていた。


新婦とは、高校の同級生だ。

特に仲の良い友達はいなかったが、彼女は裏表なくさっぱりした性格で好感を覚えた。委員同じになってからは何かと一緒に行動する事が増えたのだった。

しかし、それも卒業してお互いに進路が分かれてからは、すっかり連絡を取らなくなってしまった。




高校卒業後は特に親しい間柄ではなかったはずだが、なぜか卒業して7年実家を出て一人暮らししているマンションに、どうやって住所を知ったのか結婚式の招待状が届いた時は只々驚きだった。


 初めは、欠席しか考えていなかった。それでも考えを変えてしまったのは未練なのか。

もう、十分に理解して諦めたのにまだ、恋慕の情が抜けないのだろうか。


 もうやめときなさい。何度となく心の声が聞こえる。

最後に見た自分に対しての徹底した無関心

さが、希望を粉々にし、その時のあの人の目を思い出すだけで心が凍りつきそうだった。

あれから、もう3年も経つと言うのに。


 新婦の名前と並んで書かれてる名前。

藤 鷹也,


あの人と親友だった人。


 もしかしたら…。期待が捨てきれなかった。



 仮に、来ていたとしてもどうにもならないのに。だいたい、覚えられてるかさえ怪しい。だけど…。可能性がゼロではないなら、すこし見るぐらいなら、許されるのかな?

ほら、また都合よく言い訳してしまう浅ましい自身。でとこんな機会はもう無いかもしれない。

どうしても、目に焼き付けたかったのだ。

残酷な現実が、待っているかもしれない。


 だいたい、彼が至るなんて保証はどこにもないのにね。迷った末にりさは出席の所に名前を書いてどきどきしながらポストに出したのだった。



 新郎新婦に挨拶を終え、帰ろうと足早にホテルのロビーを横切っていると、後ろから呼び止められた。

「椎名だろ?」

「…えっ!!」

 何処に居たのだろう?それとなく新郎の招待客のテーブルはチェックしたし、そもそも自分が探さなくても、他の女性の招待客からは今回はお仕事で来れないそうよと噂が囁かれていたからだ。

少し遠慮がちに後ろから声をかけられて、ビクッとなった。バリトンの心地良い男性の声だ。 


 懐かしい声に瞬時に誰が後ろに居るのかを理解し、とっさに感情を気取れない様に貼り付けた笑みを、浮かべ振り返った。


「お久しぶりです。お元気でした?」

立っていたのは、恐ろしく容姿の整った男性だった。艶やかな黒髪に翡翠を思わせる瞳は

明らかに異国の血筋が混じっていると思われ年齢を重ねた事により色気までも加われば、周りからは、感嘆の声が聞こえ、一挙一動を見逃すまいと彼が周りから観察されているのが分かった。


その人は、学生時代よりもさらに魅力的になっていた。何よりも自分が良く知る彼に近づいている。後2年もすれば自分が誰よりも魂ごと愛した彼になるだろう。

懐かしさに、隠している思いが込み上げてきたのを、ぐっと堪えて平静を装うためにゆっくりと息を吐いたのだった。


 












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