15話 1人。

任務がようやく済んだ。

だが最近は好戦派の暗殺に忙しい。

またすぐ暇などなくなるだろう。


今のうちに、彼女に会おう。


これから何処かで死んでも後悔ないよう、会おう。数ヶ月前、彼女とはよくない別れ方をした。

ちゃんと話せたら良いと思う。

そう思って森医師の病院に向かう。


「何処だ森医師!」


聞いたことのある声が叫びを上げる。

この声は、信夫……?


病院内から大きな物音が聞こえる。血生臭い。

ひたひたと歩く音、エリスが止めようと懇願する声。


やはりこれは……。


「信夫っ…………⁉︎」


足音が止まる。本当だった。

信じたくないが、彼女だった。


「福沢さん……!助けて、くださいっ……。」


エリスが泣いて助けを求めている。相当悲惨な事をされたのだろう。

状況はよくわからないが、信夫が暴走している。どうするべきだ……。



この声は……福沢さん、だ……。


(私は今何をしてる?)


目隠しをとって世界を見てる。


(何をした?)



人を、殺した。



「っぁあ……あっ……っあっ……。」


私は人を殺した。自分の意思で。

殺したんだ。

自分で。自分でした。自分が望んでた。


逃げたい。消えてしまいたい。


また人を殺した。私が見ただけで、殺した。


走って何処かに行って、野垂死んでしまおうか。


走ろう。彼と居るのは幸せだ。

でも私は不幸でなければならない。

でも私はその不幸に耐えられない。


ごめんなさい。


歩く姿、走る姿、福沢さんに見てもらって、また頭を撫でて欲しかったな…。


でも出来ないよね。

私は人殺し。私は死神。


この世に持ってはならない異能力を持って生まれてきた忌み子。


私の罰は、苦しんで死んでいく事だ。

飢え死にすればいい。飢えに飢えて、歩きまわって、ひとりぼっちで死んでいけば良い。


それで良いんだ。


病院を勢いよく出た。

走れ。走って走って。


エリスさんが何か叫んでたけど、何も聞こえない。


走って走って走って走って……。



どれだけ走ったのだろう。ここは何処だろう。

酷く寂れた場所だ。人もいない。


その場にしゃがみ込む。

肺が千切れそうなほど痛い。

暫く走り続けたから、身体中が痛い。


幾分か呼吸が落ち着いた頃、周囲の音を聞く。

車道からどれくらい離れているか、人がどれくらい居るか。


その時だった。

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