14話 死神降臨

初めて目の前で血を吹き出して死ぬ様子を見た。

初めて己の意思で人を殺した。

こんなにも冷静で居られるものなのか。


ひどく心が冷めている。


「信夫ちゃんっ……⁉︎何をっ……。」


森医師が驚いている。

私の行為が予想外だったのだろう。


この際、森医師もやってしまおうか。


目の前が暗くなる。

エリスさんの手で塞がれたのだ。


「信夫さん……やめて……。殺しなんてしないで……。」


「……。」


「私は貴女のそんな姿を見たくない。」


私を、差し出したのは、どっちだ。

私を、殺しの道に差し出したのは誰だ。


それを黙認していたのは誰だ。

それを認めたのはどこの誰だ。


怒りが沸々と腹の奥底から湧いてくる。


「嘘を……つくな……。」


「え……?」


「私を…差し出したのは…其方だろうっ…‼︎」


手を振り解き、振り返る。

エリスの顔が見える。


「私を、殺しに導かれる様を、認めたのは、貴様等だろうっっ…⁉︎」


「それは……。」


顔を背け、部屋を歩き回る。

そこには数人の患者が居た。

しかし構わず視界に入れ、殺す。


森医師は何処だ。


エリスが止めに入るが、構わず歩く。

恨みというのはこんな力が湧き出るものなのか。

森医師はどこだ。

私を出した、奴はどこだ。


「何処だ森医師!」


いつのまにか部屋がぐちゃぐちゃになっていた。

これだけ探し回っても居ないということは、外か。


「信夫っ…………⁉︎」


「っ!」


この声は



福沢さんの声だ。

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