11話 温もりの悲しみ

目隠しが取れた瞬間、感じていた温もりが消えたのを感じた。

怖かったのと同時に、心がどうしようもないほど痛かった。


信じていたんだ。

福沢さんなら私を信じて側に居てくれると。

掴んだ手を、絶対に離さないと。


でも違った。


彼は私の手を離した。それどころか離れてから警戒心、恐怖心剥き出しでこちらを見ていた。

刺すような視線だった。


「っ……。」


ポロポロと涙を流れて止まらない。

私がこんな異能力を持っているから、福沢さんが離れてしまうんだ。

私がこんな異能力を持っているから、人が周りにいないんだ。

私がこんな異能力を持っているから…。


夢中でエリスを叫び、目隠しをつけてもらう。


私は誰も見ていない。誰も、傷つけてない。

エリスはそう云う。


でも私は…彼に心の傷を負わせたんだ。

私は、恐怖対象になると。

私は、危険だと。

私に、心を許しきってはならぬと。


それでも、福沢さんは頭を撫でて、抱きしめてくれた。少し怖がってるようだったけど、彼の温もりが体を包んでくれた優しさが嬉しくて、抱きしめ返した。


でもやっぱり同時にその温もりは悲しかった。

いつか、失ってしまうかもしれないものだから。


エリスによって、福沢さんと離れた後、ベッドに座る。何も感じない。

心に穴が空いたようだった。


(福沢さん…離れちゃうのかなぁ…。)


また、ひとりぼっちになっちゃうのかなぁ…。

また、誰も私を信じてくれなくなっちゃうのかなぁ…。


また、誰も居なくなっちゃうのかなぁ…?


森医師も、エリスさんも私の側に居てくれる。


でも福沢さんは彼らと何か違った。

福沢さんだけは…。


だからこそ、手が離れた時辛かったんだ。


ベッドで頭まで布団をかけ、丸くなる。

何も考えたくなかった。これ以上考えたらきっと彼を恨んでしまう。今まで通り居れない。


きっとエリスさんはあのまま居たら気まずいだろうと気にしてくれたんだ。


絶対、これはごく普通の事で、でもそのごく普通の事にすら私は気づかない。感情を無くしていた私には彼の思いはわからない。

まだ感情を全然知らない私には何を考えてるかわからない。


自分勝手に考えて嫌になるならば、眠ってしまおう。願わくば、今日の朝に戻っていて欲しい。


そんな事を願っていたらいつの間にか寝ていた。

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