第24話 補習(鏡花編)
テストが終わった翌週となった。
幸いと言っていいのかわからないけれど。テスト3日目からは熱も引いて、学校に来れるようになった。
でも、
「清水さんごめんなさいね。あなたが欠点とるとは思ってないんだけど、学校の決まりだから」
「いえ、私が休んだのが悪いですから」
みんながテストを返されている中、私だけ受けていないまっさらの答案用紙を渡されてそう説明を受ける。
結局、補修を受けることが決まったのだ。二人があんなにも頑張っていたのに、私だけ補習になるなんて罪悪感で胸がはち切れそう。
席に戻る途中、ふと葉山さんの顔が目に映る。こちらを心配そうに見ているのが伝わってきた。
しかし、私にはその眼差しを受け止める勇気がなく、すぐに目を逸らすように俯いた。
葉山さんになんて思われているだろう。努力を台無しにしやがってなんて思われているかもしれない。
もう普通に話すのは無理だ。お姉ちゃんに対してだって申し訳なさで話すのだけで精一杯なのに。
今日はそんなことを考えていると、一瞬で授業が終わった。
出来るだけ二人には見つからないように、授業が終わると同時に教室を飛び出した。
見た感じ、私のクラスでは欠点も休んだ人もいなかったため、少し安心した。まだ一人の方が気が楽だから。
早く出たと言うこともあって、当然私が一番乗りだった。というか、他に来る人はいないだろう。
とりあえず前から二番目の位置に座り、先生を待つことにした。
二人は帰ってゲームをしているのだろうか。テストが終わった日もお姉ちゃんはゲームをしていたみたいだし。
せめて二人には私のことを気にせず楽しんでてほしいな。せっかくのイベントだしね。
「…………はぁ、二人とゲームがやりたいな」
届くはずもないその想い。
帰ってきたら七時か、八時。そこから色々してたら相当遅い時間になる。少しは出来るかもしれないが、それでも圧倒的に時間が足りない。
「ああ、俺もだ」
「私もよ」
「えっ!?」
聞き慣れた声が後ろから聞こえてきた。やっぱり、葉山さんとお姉ちゃんだった。
「なんでいるんですか! もしかして……!?」
「いや違うぞ。なんなら鏡花さんのおかげでなんなら平均点を超えてたぐらいだ」
「私も同じくらいだったわね」
「それじゃあなんでこんなところにいるんですか!」
もしかして、冷やかしに来たの。私のせいで素材の量が減るからって理由で。
「別に、欠点じゃなくたって補習は受けてもいいんだよ」
「そこは何も言われてないからね。だから受けに来たの」
「なんでですか……。二人でゲームしてたらいいじゃないですか」
私がそう言うと二人して笑い出した。
「何かおかしいこと言いましたか?」
「いや、確かにその通りだなって」
「でもね鏡花。私たちはこの三人でやるためにテスト頑張ってたのよ。それが無理な今、補習も一緒に受けて、終わった後に三人でゲームをした方が一緒にいれるでしょ」
「でも、そんな……!」
「俺も鏡花さんと同じ気持ちなんだよ。二人でやっても面白さは半減だ。三人いるから面白いんじゃないか」
葉山さんの言葉にうんうんと頷いているお姉ちゃん。
「でも、わざわざ受けにこなくても」
「鏡花さんは違うって言うかもしれないが、鏡花さんがテストを受けれなくなった原因を作ったのは俺だ。なら、しんどいことは一緒に乗り越えないと」
「それは違います! 私のせいなんですよ」
風邪を引いたのも、それでテストが受けれなくなったもの全部自分のせい。
「それじゃあテスト期間中の睡眠時間はどれくらいだった」
「えっ……。2、3時間くらいでした」
急にそんなことを聞かれてつい本当のことを言ってしまった。
「そんなに遅くなったのはどうしてだ?」
「次の日教えることをまとめたり、テストを作ったり——」
「ほら、俺のせいじゃないか」
「これは私がやりたくてやったことなんです!」
そう、みんなとゲームがしたかった。誰にも迷惑をかけずにするつもりだったのに。
「なら、俺たちもやりたいようにやらせてもらうぞ」
「そうね。私のせいでもあるし、それに鏡花と一緒にいたいから」
そう言うと二人は、私の横を挟むようにして席に着いた。なんで二人はそこまでしてくれるんだろう。
「三人一緒だったらなんでも楽しいんだ。だから早く補習を終わらせてゲームをやろうぜ」
「そうよ。三人で受ければ一瞬なんだから」
「…………」
目頭がとても熱くなる。前がぼやけて見えなくなっていく。
「……ありがとう……。二人ともありがとう」
もう嫌われたと思っていた。二人にこんなに優しくされるなんて思ってもいなかった。
「このギルドは助け合いだ」
「それに鏡花がいなくちゃ私がカプリスと結婚しちゃうわよ……あれ、それはありかも」
「おい、せっかく感動できるシーンだったのに!」
「じょ、冗談よ! 鏡花がいないと張り合いないし」
もう二人は何にも気にしていないんだ。今回は誰のせいでもなかった。そのことに胸がジーンと熱くなり嬉しくなる。
「早く終わらせてゲームしましょうね」
溢れる涙を拭き終わり、私はそう二人に声をかけた。
「ああ!」
「当たり前よ!」
二人も笑顔で応えてくれる。
私は本当にいい友達を持った。ずっと信じてくれる友達を。
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