正義のヒーロー始めました! 武器になるのは靴だけですが、親友と世界を救うために、変身して戦います!
空花 星潔-そらはな せいけつ-
【第1章】正義のヒーローはじめました!
親友の秘密
第1話 守るべき者
「なにがあっても、おれがたすけてあげる。だから、なかないで」
いつも、親友である
菰葉をいじめた人たちを改心させ、友達になれるような、優しくて勇気のある、明るい男だった。
——————————
確か、
しかし、彼は菰葉の家とは関係の無い方向に走っている。
彼が走るたび、彼の茶髪がパタパタと揺れる。1束だけ伸ばしてあるその髪を、初めのうちは耳にかけたりしていたが、今は髪に構っている暇なんて無い。
時折振り返り、逃げ道を探して走っているから、瞬きができない。
彼の水色の目が乾燥し、涙が膜を張る。
「なんっ、だよ……あれ……!」
衣來の後ろを、怪物が追いかけてきていた。
幸い運動神経は良い方だから、追い付かれることなく逃げられているが、怪物を撒くために何度も何度も道を曲がったから、全く知らない場所に来てしまっている。
人通りも無い。
怪物は衣來を真っ直ぐに狙っているようで、どんなに逃げても諦めてくれる気配が無い。
「っ!」
痛む肺に酸素を送り、乾燥しきった喉を、唾を飲み込んで潤す。
そんな余計な事をしていると、周りを見るのが疎かになり、
喉が乾燥で張り付き、声が出せない。
今、自分が息を吸っているのか、吐いているのか、それすら分からなくなっている。
怪物が、
このままだと、殺される。
そう直感した衣來は、回らない頭で生き残る術を考えるが、何も思い付かない。
「ギュエ゛ッィアァ゛ッ」
絶体絶命、その言葉が頭に浮かんだ瞬間、怪物は鋭い叫び声を上げ、衣來から背を向けた。
「ギァオォォンネ゛ェゲ!」
怪物は、何かを威嚇するように叫び、触手を振り回している。
何に対する威嚇なのか、衣來からは見えなかったが、今は自分が狙われているわけでは無いのだと気付くと、全身から力が抜けた。
そのまま地面に座り込んでしまった衣來は、ぼんやりと怪物を眺める。
この隙に逃げる術でも考えるべきなのだろうが、かなり長い間本気で走っていたから、頭が働かなかった。
「ギュンエェェ゛オ゛ィア!!」
どれくらい経ったか、怪物は叫び声を上げて倒れたきり、動かなくなった。
「……大丈夫?
怪物を隔てて、そこに立っていたのは
疲れているからだろうか、見知らぬ場所に菰葉が居ることとか、恐らく怪物を倒したのは菰葉であろう事とか、そう言うのよりも、他の事が気になってしまった。
「
衣來の知っている限り、菰葉は彼の姉の趣味だけで選ばれた、オシャレな大学生のような服ばかりを着ている。
そんな彼が今着ているのは、紫と白で構成された、コスプレ用にデザインされた
不自然に、肩からカバンを提げている。
「大丈夫そうだな……」
苦笑しながら菰葉がカバンに——カバンに付けられたストラップに手を押し当てる。
すると、彼の着ていた服は制服に変化してしまった。
「なにそれ、どういうこと?」
「何でも良いだろ。ほら、帰るぞ」
「え、うん。良いけど、なに?」
衣來は、高校進学がきっかけで学校が離れてしまうまで、ほとんどの時間を菰葉と過ごしてきた。
お互いに、相手の事は何でも知っていると思っていた。
「後で話すから。……今は帰るぞ。家に来るんだろ?」
「あ……そうだね! うん、遅くなっちゃったけど、行こっか」
グッと衣來の手を握り、歩いて行く菰葉。
2人は幼い頃からの親友だった。
これからだってそうだろう。
しかし、高校生になって
「……」
菰葉の小さな呟きが、衣來には聞こえていたが聞かなかったふりをして、そのまま忘れたフリをした。
⏱☆⏱☆⏱☆⏱☆
正義のヒーローはじめました〜刀や嘘だけじゃない、靴やペンだって武器になる〜(以下ヒロきる)を読んでいただき、ありがとうございます!
彼らの関係が気になる! 衣來の変身に期待! 他の登場人物まだ? という方は是非、フォローお願いします!
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