エタリップ海賊団と海の神

みーこ

第1話 冒険したい!

 わたしは、たしかにうみきたいとねがった。

 ふねって冒険ぼうけんしたいとおもったのも本当ほんとうだ。

 でも、それが本当ほんとうかなうとはおもってなかった。


          ☆


 波風なみかぜ宇海うみは、ほんんだり映画えいがたりするのがきで、とく魔法使まほうつかいや海賊かいぞくてくるおはなしがおりだ。自分じぶん魔法使まほうつかいみたいに呪文じゅもんとなえたい、海賊かいぞくみたいにうみ冒険ぼうけんしたいといつもおもっている。でも、それはおはなしなか出来事できごとで、現実げんじつにはありえないことだとっていた。


 だから宇海うみは、自分じぶん物語ものがたりく。


 主人公しゅじんこうは、自分じぶんおなどしおんな。そのおんなが、魔法使まほうつかいになったり、海賊かいぞくになったりする。そんなみじかいおはなしを、いくつもいた。だれかにせたことはないけれど、でもいつか小説家しょうせつかになれたらいいな、とおもっている。


 いまいているのは、おんな女性じょせいだけの海賊団かいぞくだん出会であうおはなしおんな女海賊団おんなかいぞくだん一緒いっしょ大海原おおうなばら大冒険だいぼうけんするのだ!


          ☆


 とおい、とおい、うみうえに、いっせきのふねがうかんでいます。


 そのふねはなんとかいぞくせんで、っているのはおんなひとばかりです。


 あるかいぞくたちは、うみうえなにかを発見はっけんします。それはおんなでした。かいぞくたちはいそいでおんなたすけます。


「きみ、大丈夫だいじょうぶかい?」


 船長せんちょうおんなきました。


「げほっ、げほっ……大丈夫だいじょうぶです」


 おんなこたえました。


「ねえきみ、わたしたちといっしょにうみをぼうけんしようよ!」


 また船長せんちょうきました。


「いいんですか⁉ ぼうけんしたいです!」


          ☆


「ん~……冒険ぼうけんした~い!」


 夏休なつやすみにはいって何日なんにちったころ、宇海うみ自分じぶん部屋へや小説しょうせつきながらそうさけんでいた。夏休なつやすみにはいまえ、クラスのみんなはどこにあそびにくかたのしそうにはなしていた。でも宇海うみはそのなかはいりたくてもはいれなかった。宇海うみ両親りょうしんきびしくて、夏休なつやすみの宿題しゅくだい全部ぜんぶわってからじゃないと、あそびにれていかないとうのだ。


(そんなの、いつになるのかわかんないよ……)


 夏休なつやすみはたくさんある。でも、宿題しゅくだいもたくさんある。おまけに「これもやりなさい」と、おかあさんが英語えいごのドリルをわたしてきた。英語えいご苦手にがてなのに。


絶対ぜったいあそばせないだよ、おかあさん)


 小学校しょうがっこう最後さいご夏休なつやすみなんだから、ちょっとくらいあそばせてほしい。一日いちにちくらいあそんだってバチはたらないはずだ。




 ときどき宇海うみよるまえに、星空ほしぞらにおねがごとをする。明日あしたのテストでてんれますように、とか、明日あした遠足えんそくだかられますように、とか、おかあさんがサラダにトマトをれるのをやめてくれますように、とか。そうすると、なんだかテストでてんれるがするし、遠足えんそくれるようながするのだ。トマトは今日きょう夕飯ゆうはんにもれられたけど。


 今夜こんや宇海うみは、星空ほしぞらにおねがごとをした。今日きょうみたいによくれて綺麗きれい星空ほしぞらえるは、いつもよりもねがいがかないそうながする。


明日あした一日いちにちだけでもいいからあそびたいです……。なにがいいかな……そうだ、うみうみきたいです。うみって……あ、ふね! ふねって、海賊かいぞくみたいに冒険ぼうけんがしたいです。神様かみさま、どうかおねがいします)


 んで、じながら、星空ほしぞらけてねがった。どうかこのねがいをかなえてほしい。でも……。


無理むり、だよね……。そんな現実げんじつ……海賊かいぞくなんて、ありえないもん)


 こころのどこかで、そうおもっていた。


 それでもせめてゆめてきたらいいな、とおもって宇海うみ今日きょういた小説しょうせつまくらしたいてることにした。


 どうか、ゆめでもいいから、うみ冒険ぼうけんをしたい。


          ☆


 れているな、とおもった。


 れているから地震じしんかな、ともおもった。


 でもずっとゆっくりれているし、かたもなんだか心地良ここちよい。地震じしんだったらすぐつくえしたにもぐらないといけないけど、地震じしんじゃないならもうすこしこのままててもいいかな……。


(ん……? あれ? そうか、わたしてたんだ……)


 もうあさたんだ。そうおもうとおなかいてきた。きて、あさごはんをべよう。でもなんれているんだろう……? 宇海うみがぼんやりとかんがえながらけると、おんなひとがそこにいた。


(おかあ、さん……?)


「あら、めた?」


 やさしいこえおんなひとった。茶色ちゃいろかみこしまでばしている。おかあさんじゃない。おかあさんのかみ黒色くろいろだし、ここまでばしてない……。


いま船長せんちょうんでくるから、ちょっとっててね。ここにあたたかいスープがいてあるから、よかったらんでね」


 おんなひとはそうって、どこかへってしまった。


船長せんちょう……?)


 宇海うみをこすりながらがってまわりをると、全然ぜんぜんらない場所ばしょにいた。自分じぶん部屋へやじゃない。自分じぶんのベッドじゃない。かべも、ゆかも、天井てんじょうも、全部ぜんぶ出来できている。ベッドもちょっとかたい。ベッドのよこにはさっきのおんなひとったように、スープがのボウルにはいって湯気ゆげてている。


(ここ、どこ……? なにこれ……?)


 ベッドとは反対側はんたいがわかべに、ちいさなまるまどつけた。宇海うみいそいでそのまどってそとた。


「ウソ……」


 まどそとひろがるのは、あおうみあおそら水平線すいへいせん。それだけだった。


「ウソ、ウソ、ウソ……⁉」


(わたしいまうみにいるの……⁉ それじゃあここは、ふねなか⁉)


 なんで? どうして? これはゆめ? それとも現実げんじつ


 いろんな疑問ぎもん宇海うみあたまをいっぱいにしていると、突然とつぜん部屋へやとびらひらいた。びっくりしてくと、そこにいるひとてさらにびっくりした。


(え……⁉)


「もうてるなら大丈夫だいじょうぶそうだね。ようこそいらっしゃいませ。がエタリップ海賊団かいぞくだんへ」


 そうって深々ふかぶかとお辞儀じぎをしたひとは、ライオンのたてがみのようにふわふわとした金色きんいろながかみをなびかせ、ところどころ金色きんいろのレースで縁取ふちどりされた豪華ごうかふくて、虹色にじいろかがや羽飾はねかざりのついた派手はで帽子ぼうしをかぶった“女性じょせいの”海賊かいぞくだった。


「ええ~~~~⁉」

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