第123話 Xmas Present
もうすぐクリスマスだ。
こっちのクリスマスがこんなに賑やかだったなんて知らなかった…
街中はどこもお祭りムード一色…
「真古ちゃん お帰りなさい」
外から帰ったわたしにお義母さんが声をかけてくれた。
「寒かったでしょう 今お茶淹れるわね」
「ありがとうございます。数くんは荷物置いたらお友達の所にそのまま行きました」
お義母さんはとっても優しくて、わたしと赤ちゃんのために色々と心を配ってくれる。
数くんの病気を考えたら一人で日本へ行かせるなんて凄く心配だったに違いない…
初めてこの家に来た日、お義母さんは本当に喜んでくれた。
「彼女が出来れば上等だと思ってたけど、まさかお嫁さんを連れて帰って来るなんて…」
お義母さんの潤んだ瞳を見たら、わたしは本当の事を何も言えなくなってしまった…
「今日は美術館の近くへ行って来たんです…大勢の人で、観光客の人もたくさん来てました」
わたしはお義母さんの淹れてくれた紅茶を飲みながら答えた。
「今年は数祈も真古ちゃんもいるからお菓子をたくさん作らなくっちゃ…お手伝い頼むわね」
「はい」
数くんが日本にいる間は寂しかっただろうな…
「そうだ…真古ちゃん お友達からクリスマスプレゼントが届いてたわよ。ちょっと大きくて重たかったからお部屋に置いてあるから」
部屋に戻ろうとしたわたしにお義母さんが教えてくれた。
「ありがとうございます」
わたしはお義母さんにお礼を言って自分の部屋に向かった。
友達なんて誰もわたしが
知っているのは一人だけ…
辻宮暉先輩だ!
辻宮先輩とはひと月程前、散歩中に町外れで偶然再会した。
初めは日本から遠く離れたフランスで、自分を知っている人に出会えたことが信じられなかった。
「久しぶりだな。元気だったか?なんだお前、結婚したのか」
優しく笑って話しかけてくれる先輩に、今まで我慢していた気持ちが一気に崩れて、大泣きしてしまった…
一人ぼっちだと思っていたところに、優しい先輩に逢えて、わたしは凄く嬉しかった。
先輩が心配して訊く事に、わたしは全て話した。今まで誰にも言えず、自分の心の中に押し込めてきた物を全て吐き出したかったのかもしれない。
「よく頑張ったな…」
辻宮先輩は、泣きながら話す私の背中をずっと撫でてくれた。
部屋に戻ると、机の上に大きな包が置いてあった。
わたしは急いで包み紙を剥がし始めた。
中には箱と手紙が入っていた。
Marry Xmas 親愛なる真古都様
ボーナスが入ったから奮発してやったぞ
有難く思え
メッセージカードにはそれだけ書いてあった。
『先輩…何贈ってくれたんだろう…』
わたしは箱の蓋を開けた。
どうして?
と、最初はわからなかったが、右下に書かれてあるサインを見て胸が張り裂けそうになった。
「先輩…ありがとうございます…」
涙が止まらなかった…
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