第121話 誤算
わたしはとんでもないところへ来てしまったと思った…
霧嶋くんの言う事も判る…だけど…
真古都さんが困惑の表情を崩さない。
納得の行かない様子だ…
でも…そのうち嫌でも馴れるよ…
「真古都さん、そろそろ夕食に行こうか
ホテルの支配人が僕たちのためにちょっとしたお祝いをしてくれるそうだよ」
「えっ? わたしたちのためになんで?」
わたしは少し驚いて聞き返した。
「ここの支配人とウチの母さんは仕事上の付き合いがあるんだよ。だからじゃないかな」
お義母さんの知り合いなら、失礼があったらダメだよね…
わたしは着て行く服を選び始めた。
「真古都さん…服で悩んでる?」
「うん…ホテルの夕食なんて予想してなかったから…」
トランクの中の服とにらめっこしているわたしに、霧嶋くんがお義母さんからホテルに届いていたと、リボンの付いた箱を持ってきてくれる。
開けると中には濃いグリーンに白いレースが付いたワンピースが入っていた。
お義母さん…ありがとうございます…
スーツ姿の霧嶋くんにエスコートされてレストランの会場へ行った。
霧嶋くんを見て振り返る女の子は一人や二人じゃない…
フランスでも、女の子の目を引くのは変わらないな…
しかも…こっちの女の子は大胆で積極的だ…
わたしのお腹があまり目立たないのと、お義母さんが贈ってくれたワンピースが、胸のところでギャザーの切り返しになってるから直ぐには妊婦だと判らない。
わたしが傍にいても平気で声をかけてくる
霧嶋くんは、声のトーンと表情を見る限りその度に素っ気なく対応している感じだ…
『国が変わっても相変わらず霧嶋くんは女の子に人気だな…』
席につくと、直ぐに支配人らしい人が来て霧嶋くんと話してる。
わたしは何言ってるか判らないからただ笑ってるだけ…
『霧嶋くん…ワインのテイスティングも様になってるな…』
そう云えば機内でも霧嶋くんのところは何本もワインやシャンパンが来てたっけ…
「真古都さん…
僕と結婚してくれてありがとう
お腹の赤ちゃんも順調だし…
今の僕は世界一幸せだよ」
霧嶋くんがワインのグラスを持って笑いかけてくれる。
「もう、大袈裟だな」
わたしもワインのグラスを持って答える。
お料理も美味しいし、デザートのケーキも美味しい。
わたしは…霧嶋くんが勧めるワインをつい飲みすぎた…
「真古都さん 大丈夫?」
僕は彼女に冷たい水を渡した。
「ありがとう お料理もワインもあんまり美味しかったからつい飲みすぎちゃった…
ちょっち酔ったけど大丈夫…」
真古都さんは水を飲み終わると着替えに行った。
『酔って赤くなった真古都さんも可愛いな』
僕は少し経っても部屋から出てこないので声をかけた。
「真古都さん 入るよ…」
ベッドルームに入ると、彼女は着替えてる途中でベッドに横になって寝ている。
「真古都さん…全然大丈夫じゃないじゃん」
僕は彼女の傍に行き声をかける。
「真古都さん起きて…服脱がないとシワになるよ」
「判ってるよぉ…ちょっち横になってただけだもん…」
真古都さんは起き上がって下着のスリップを脱ぎ始めたが、足元に落ちたスリップから足を抜こうとしてよろける。
「大丈夫じゃないね 手伝おうか?」
よろけた彼女を抱きとめて僕は訊いた。
「ひ…一人で出来るよ…」
そう言って躰を離すが足元がおぼつかない。
「ほらほら、危ないよ。」
僕はそのまま真古都さんをベッドに寝かせる。
「こんな時は着替えくらい手伝うよ」
真古都さんは起きようとするけど上手く躰が動かないみたいだ…
大分ワインを飲んだから…当然かな…
「真古都さん 大丈夫だから任せて…
夫婦なんだから…
僕が脱がせても構わないでしょ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます