わたくし、前世では世界を救った♂勇者様なのですが? 〜魔王を倒し世界を救った最強勇者様だったこの俺が二度目の転生で、超絶美少女貴族に生まれ変わってしまった。一体これからどうなる私のTS貴族令嬢人生!?
第九話 シャルロッタ・インテリペリ 一〇歳 〇八
第九話 シャルロッタ・インテリペリ 一〇歳 〇八
「クハハハッ! これは楽しそうだ!」
カトゥスが両手を広げると、その両手に魔力が凝縮されていく……魔力は闇へと変換され、その手のひらにまるで泣き叫ぶような複数の顔が顕現していく。
割と勘違いされているけど、これ自体は邪悪でもなんでもなく生命を操るだけなのだが、割と見た目と使用目的で損をしており、学ぶものはそれほど多くない。
「初手でそれか……ッ!」
わたくしは空いている左手に魔力を込める……カトゥスの放とうとしている魔法は
それを両手で同時に二発放とうとしている……その事実だけでも割と目の前の
「死霊に噛み砕かれて死になさい……!」
「シャル!」
「ユル、こっちはいいから
ユルが慌ててわたくしを守ろうとするが、それを制して
自分の方向にわたくしだけしか向かってこないことで、与し易いと判断したのかカトゥスは口元を歪めると、両手に集中させる魔力をさらに増大していく。
極大まで収縮した魔力により顕現した死霊たちが、悲痛な叫び声を上げる……次の瞬間、カトゥスの両手から
「光よ我が元へ……
わたくしの前面に光り輝く盾が出現し、飛来した
まあ……高位魔法を受け止めるほどの防御性能は本来無いため、
「……その魔法で受け止められるような攻撃では無いはずですが……」
「世の中魔力を込めれば大体どうにかなりますのよ?」
「なんて雑な……だがそう何発も受け止められるわけではないでしょう?」
カトゥスが呆れたような顔で、再び魔力を集中させていく……割と彼の攻撃はオーソドックスに権能を生かした魔法攻撃か……ならなんとかなるな。
ユルの方を軽く横目で確認するが凄まじい数の
ユルは黒い毛皮と、炎を纏う尻尾をしなやかに動かしつつ、
次はわたくしだな……カトゥスが再び
だけど……これだけじゃあ魔王を討伐した
素手で殴り掛かろうかというわたくしの姿勢に、
「なんだ、次は魔法を素手で殴ろうとでも言うのかね! それこそ非現実的ではないか!」
「もう一つ……あなたの知らないことを教えて差し上げてよ、感謝くださいましね」
「……何だ!? 生意気な小娘が
「世の中は、
わたくしはその言葉と同時に拳に魔力を乗せて軽く突き出す……空手の正拳突きに似たその拳から放たれた衝撃波の勢いで、迫り来る
まるで巨大な大砲、いや地形を軽く変えるほどの威力により、ユルの近くにいた
「……は? え? 腕?」
カトゥスは肩から吹き飛ばされた右腕を見て、呆然としている……彼らに痛覚がないわけではないが、あまりに非現実的な光景に彼の思考能力が追いついていないのだろう。
わたくしが放つ渾身のストレートは、勇者時代の能力で放つことで地形を変えるくらいの破壊力は出せる、まあそう何発も叩き込むには少し負担が大きいのだけど。
呆然とする
「この、クソ女ッ!」
「お姫様に失礼じゃなくて? 炎よ、稲妻となりて荒れ狂え!
わたくしは左手で一気に複数の中位炎魔法である
山賊の親玉に放った時は一本だけ撃ったが、
「うがあああああっ!」
カトゥスの体を何本もの
だが流石に
魔法抵抗力が高すぎて、この程度の魔法じゃ一気に押し切れないのか……次の手を打つためにわたくしは一気に空中へと跳躍する。
「さて、お仕置きの時間ですわよ」
「あ……ああ……お前は……」
カトゥスの眼前まで高く跳躍したわたくしを見て、
勇者として戦うにあたって、あらゆる武器の戦闘法を鍛錬し極めよ、これは前世のわたくしに戦い方を教えた師匠の言葉だ。
前世の世界でも使われていた武術はいくつかあるが、護身術などから派生した「
「ねえ、勇者である条件ってご存知かしら?」
「は、え? ゆ、勇者? 何を言って……」
勇者である条件、それの一つに全ての
それ故にわたくしは二〇歳で魔王と相打ちになったとはいえ、そのすべての人生を修行と戦いに明け暮れていた……前世の全ては戦いの中にあった、勇者とは世界で最強の戦闘兵器でもあるのだ。
「——我が白刃、切り裂けぬものなし」
わたくしが空中で構えた
剣を振り抜いたわたくしは地上に降り立ちながら、腰に下げた鞘へと
空中で血飛沫を上げながら、バラバラに解体され絶命していく
「え、な……な、に……私は、もう……死ん……ッ!」
「
わたくしがそう呟くと同時に、地面へとバラバラに切り裂かれた
それと同時に、この地域にモヤのように漂っていた強い死の匂いが消滅していく……宿主であるカトゥスが死んだことで、留まれなくなったのだろう……あれだけいた
わたくしはあまりの光景を見せられて呆然としているユルに向かって可愛く微笑むと、サムズアップをして笑う。
「これで、一件落着……ですわ、すっきりしたし後片付けして帰るとしましょうか!」
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