【番外編】風俗店 深夜のバラエティ番組 後編

この番組は冒頭にフェチな商品の紹介があり、本日のフェチさんが登場して、番組のアシスタントの女の子がそれを体験する。


「それでは改めて、Mさん、お願いします」

司会者の言葉で観覧席から再登場するMさん。


「先ほど、ラップとビニールテープによるマミフィケーションを見せて頂きましたが、今度はどんなものを見せて頂けるのですか?」

司会者の言葉に大きく頷くMさん。


「石膏によるマミフィケーションです」

スタジオがどよめく。


「あれ、そういえばアシスタントの近田 由里子(ちかだゆりこ)ちゃんがいませんね」

司会者の言葉に由里子がモニター越しに反応する。


「私は今、別室で準備をしいました」

モニターに由里子が映し出される。

全身をラップで覆われているが、両足、そして両手も個別にラップで覆われているため、自分で歩くことは可能なのだが、関節が曲がらないためロボットの様な動きになっている。

体にはしっかりとラップが巻かれているが、頭だけは出ているので由里子だと確認できる。


「由里子ちゃん、今から何を体験するか知ってる?」

「いえ、知らないです、体の表面が熱くなるからウエットスーツを着せられました」

確かにラップの下にはウエットスーツを着ているのが見て取れる。

「それと、ウエットスーツが汚れるからという事でその上から全身にラップを巻かれたところです」


司会者は含みのある笑顔で今日の体験を発表する。

「今日はなんと、由里子ちゃんには石膏でミイラになって頂きます!」


「えー!私、ミイラにされるんですか?」


どうも白々しい由里子のリアクション。

当然、本人には事前に知らされている。


「では早速、Mさん、お願いします」

Mさんは別室の由里子がいる部屋へと移動し、大量に準備された石膏の横の椅子に由里子が移動して、足元から石膏を巻き付け始めた。


由里子の周りには数台のカメラがセットされて、石膏ミイラ作成の様子がカメラに収められていく。

ただ、時間がかかるため数台のカメラで撮影して早送りで放送はされる。





「では、ミイラが完成するまで時間がかかりますので、一般の方からの疑問解決のコーナーをやっていこうと思います」

と司会者。


[私の疑問を解決して下さい。それは女性のような置物があれば、大都会ではそれを持ち帰る人はいるのかということです。自分でやってみようと思いましたが、怖くてできませんでした。検証お願いします。]


「といったご依頼を頂きました、どうもありがとうございます」

「でも、そう都合よく女性のような置物なんて、あり……ありました!七海ちゃんがいました」

ワザとらしく、司会者が話す。


「マネージャーさん、七海ちゃんに検証を手伝ってもらっていいですか?」


マネージャーはいつものように少し考えて、すぐに両手で大きな○を作った。


「はい、ありがとうございます、マネージャーさんの許可も頂きましたのでこれから検証を始めていきたいと思います」


「でも、あんなチューブが飛び出していたら、人だとすぐにバレちゃいますね」

司会者の言葉にRが提案する。


「チューブを短く切って、この口のところだけマイクロホールになった赤いラバーマスクを被せるのはどうですか?」


「いいですね、早速やってみましょう」

ソファーに縛り付けられた七海の元へと行き、司会者がチューブを切断し、Rさんが赤いマイクロホールマスクを七海に被せていく。

最後にチューブと細かな呼吸穴を合わせた。


「おお、これは凄いですね、まるで置物ですね、では屋外へ運ぶ準備をしましょう」


スタッフの手によって七海をソファーに括り付けたロープが解かれ、スタジオの中央へ運ばれてくる。


「今日は寒かったですよね、夜になると冷え込むので、ダウンコートを着せてあげた方がいいと思うのですが」

司会者が七海のマネージャーの方を見る。

七海のマネージャーはウンウンと頷いて、スタジオを出て行った。


程なくして戻ってきたマネージャーの手には黒光りしたロングのダウンコート。

ダウンコートは某有名メーカーの高級品、軽くて温かい。

司会者がそれを見て言う。

「そのダウンコートなら大丈夫ですよね」


七海の私物のダウンコートを拘束され物のようにされた七海へと着せていく。

ただ、後ろ手で、足まで曲げた状態の上、何重にも拘束されているので、本来の七海よりもサイズアップしている。


物のようにされて動けない七海はダウンコートを着せてはもらったが、パツンパツンで前のファスナーを閉めるのにも一苦労。

後ろ手に拘束されているので、ダウンコートに腕を通す事はできない。

なので、腕の部分はダウンコートの中へと押し込んだ。


赤いツルツルの頭にダウンコートのフードを被せて、顎の辺りでスナップボタンを留めた。


全身が光沢のある赤色だった七海は、自分のダウンコートを着せられて黒光りする物体へと変わった。

膝下まであるダウンコートは、フードから覗く七海の赤色のノッペラボウの顔以外を全て覆い尽くし黒光りする物体へと変えた。


「用意は整いましたので検証お願いします」

当然、歩くどころか身動きの取れない七海はスタッフが用意した大きめのカバンに詰め込まれるとスタジオを出て行った。


「あのカバンのまま、検証を始めるんでしょうかね、後はディレクターさんにお任せしましょう!」

司会者はそう言って七海を見送った。






一般の方から検証の準備でかなり時間が経過した。

「由里子ちゃんのミイラはどうなりましたか?」


モニターに由里子が映し出される。

「足が石膏で固められ、今は私の胸の部分まで石膏ミイラにされています」

カメラが由里子の顔のアップから引いて全身を映す。

もうすでに体の大半は石膏に覆われて、首の辺りまで来ていた。


「水を含んで柔らかくした石膏を体に巻き付けてもらうのですが、確かに熱くなってきますね」

「ウエットスーツのお陰で熱すぎることなく、ほんのり温かい程度です」

と由里子はレポートする。


「Mさんは両手を真っ白にして頑張って頂いていますので、代わりに私が話しますね」

「石膏が固まるまで時間がかかりますので、今、スタッフが扇風機とドライヤーを使って石膏を巻き付けたところから順次乾燥させています」


Mさんが由里子に何か話しかけた。

「あ、はい、分かりました」


「これから頭も石膏ミイラにしてもらいますので、今から特注のウエットスーツのマスクを被ります」


由里子がそう言うと、スタッフが由里子の髪を簡単に纏めて、ウエットスーツと同じ素材でできたマスクを被せていく。

マスクから伸びる裾をスタッフは丁寧にウエットスーツの中へと押し込めていく。

特注のマスクには口のところにしか穴が開いていない。


「今から呼吸用のチューブを咥えます、咥えると話せなくなるので、レポートはできません、私がミイラにされる姿を見て皆さん楽しんで下さい」

マスクを被せられ、くぐもった声でその事を伝えた由里子のマスクの呼吸穴にチューブが差し込まれた。

そしてチューブを固定する形でラップが巻かれていく。

顔全体にラップが巻かれた時点でカメラが切り替わる。


「それでは由里子ちゃんの石膏ミイラを楽しみに待ちましょう」


「え、はい、七海ちゃんが現場に到着した様です」





物と化した七海を詰めたバッグが渋谷のスクランブル交差点に到着し、カメラが切り替わった。

ロケバスから行き交う人の目を盗んで、路上にスタッフがカバンを置いてすぐに離れる。


行き交う人々は忙しそうにカバンになど目をくれない。

だが、若い男性2人がカバンを見つけて中身を確かめる。


だが、カバンの中に入っているのは何重にも拘束され人としての尊厳を全て奪われ、呼吸しかできない七海。


中身を見て固まる若者2人。

だが、近くにいた仲間を呼んだ。

さすがにヤバいと思ったスタッフはロケバスを飛び降りて拘束された七海の入ったカバンの奪還に向かう。


だが、ヤンチャそうな若者たちがカバンを簡単に返してくれる訳もなく揉め始めた。


ちょうどそのタイミングで警察官が現れた。

警察官が仲裁に入り、何とかその場は収まった。


しかし、警察に事情聴取をされることになったスタッフは警察へ連れて行かれた。

ここで撮影は途切れてしまった。


司会者が言う。

「申し訳ございません、トラブルがあり、検証が継続できなくなりました、結果はやらないほうがいいと言う事で締めさせて頂きます」





若者とスタッフの行き詰まるやり取りは思いのほか時間が経過していた。


時計を見た司会者が言う。

「由里子ちゃんのミイラはどこまでできましたか?」


カメラが切り替わると、椅子に座った形で石膏ミイラとなった由里子ちゃんのアップが映し出された。


スタジオが響めき、司会者が由里子に話しかける。

「由里子ちゃん、凄い完全にミイラになっているよ!」

司会者の声に応じる様に呻き声を上げる由里子。


「凄いですね、Mさん、これがマミフィケーションですね」


「ハイ!」

とだけ答えたMさんは汗だくで手も腕も真っ白になっていた。


「どれぐらいで石膏が乾きますか?」

「そうですね、10分ほどあれは乾くと思います」


「そうですか、分かりました」

司会者が別室とのやり取りを終える。




「では、この間に本日の2本取りの2本目に登場して頂くグラビアアイドルの星乃 瑠璃(ほしのるり)ちゃんとアシスタントの海野 光(うみのひかり)ちゃんを紹介させて頂きます」


拍手と共に瑠璃と光が現れて、司会者の横へ。

「今日がグラビアアイドル枠とアシスタント枠の交代になるんだけど、これからの意気込みを聴かせてもらえるかな?」


「では、瑠璃ちゃんから」


「星乃 瑠璃です、七海さんに負けないくらい体当たりで頑張っていきますのでよろしくお願いします」

可愛く幼さの残る顔に似合わない大きな胸を震わせてお辞儀をした。

スタジオから大きな拍手が起こる。


次は落ち着いているがどこかエロさも感じさせる光の挨拶。

「これからアシスタントを務めさせて頂きます海野 光です、スタッフさん出演者さんの足を引っ張らないように頑張っていきます」

「引っ張ってもいいよ!」という声と共に大きな拍手が起こる。



スタッフも出演者も七海と由里子が今日で番組が最後だという事は知っていた。

だが、七海と由里子はその事を知らされていない。


さらに、七海に関してはこの番組終了と共に事務所との契約も切れてしまう。

だから、マネージャーは司会者から許可を求められても全てOKを出していた。

加えて、このマネージャーは明日からは瑠璃のマネージャーとしこの番組に参加する事がきまっている。


そんな事とは梅雨知らず、七海も由里子も体を張っていた。






「そろそろ、石膏ミイラ、完成しましたか?」

司会者が呼び掛けると、別室へとカメラが切り替わる。


カメラには椅子に座った状態で固められた由里子の姿があった。


「おお、石膏ミイラできてますね、お疲れ様ですMさん」


「お疲れ様です、次に繋がるように仕上げました!」

その言葉を待っていたかのように司会者が会話を始める。


「Mさんは普段、家具職人さんなんですね」

「はい、椅子や机を作っています」

「では、その石膏ミイラを使って椅子を一脚お願いできますか?」


「分かりました、では早速取り掛かりますね」

そう言って、手を振ったMさんを最後にカメラがスタジオに切り替わった。


「さあ、ミイラにされた由里子ちゃんの入った椅子、どんな形で仕上がるのか楽しみに待ちましょう!」

「ちなみに、頭を石膏でミイラにする前に由里子ちゃんには耳栓をしてもらっているので、私たちの会話はほとんど聞こえていません」


「では椅子ができるまでの間、石膏ミイラができるまでを早送りで見ていきましょう」

スタジオのモニターにラップで全身を覆われた由里子の体が早送りでどんどん石膏ミイラにされていく。


早送りでもかなりの時間を要している。

実際にはかなりの時間を要した事が分かる。

体が石膏で覆われた後から、続きの映像が流れる。

こちらも早送りだが顔だけなので、すぐに終わった。



「もしもし、こちら別室です」

音声だけがスタジオに流れた後、映像が別室に切り替わった。


映像には先ほどまでスタジオにいた海野 光が映っていた。

「私の初仕事、別室のレポートをしたいと思います」


「石膏ミイラとなった由里子さんなんですが、Mさんの手により今、石膏の上から座面、背もたれ、それに肘掛けにウレタンが取り付けられています」


「Mさん、こだわりはありますか?」


「そうですね、座る人が快適に座れて気持ちよく感じる椅子を作るのをモットーにしております」


そう言うとMさんは座面のウレタンを何度も押して感触を確かめていた。


元々の椅子の脚に由里子の足は石膏で固定され、その上からは茶色の合皮が巻かれて見えにくい箇所で綺麗に縫合されていた。


バランスを取るため、元々の簡易的な椅子の脚も石膏で由里子の足と同じ太さにしてから、合皮を巻き付け縫合していた。


由里子の太ももである座面のウレタンがしっくりきたところで、合皮を被せて裏側で縫合していく。

座面の縁はコの時になった金属を四辺に嵌め、金属を潰すようにして変形させる事で、座面の合皮をしっかりと固定させる。


同じ要領で肘掛け、背もたれが出来上がっていく。

石膏で身動きできずに、その上から椅子へと加工された由里子はどんな心情なのだろう。


なかなか出してもらえない事に苛立っているのだろうか。

それとも仕事と割り切って、石膏ミイラとして耐えているのだろうか。

まさか、自分が椅子に加工されているとは夢にも思わないだろう。


Mさんは最後の仕上げにかかる。

背もたれの上にある由里子の顔。

石膏から飛び出したチューブを背面へ回すと、その顔にウレタンを貼り付け、合皮を被せると呼吸だけ確保して合皮を固定していった。


「由里子さんで出来た椅子が完成しました、今からスタジオにお届けします!」

海野 光が元気よく伝えた。


程なくして台車に載せられた椅子にされた由里子とMさんと光がスタジオに戻ってきた。




司会者が聞く。

「この由里子ちゃんの椅子は私が座っても大丈夫ですか?」

Mさんは頷く。

「大丈夫ですよ、石膏がしっかりと固まっていますので、由里子さんはほとんど重さは感じません」


「では、失礼して」

司会者はそう言うと、由里子で出来た椅子に座った。

「ああ、なるほど、座り心地は上質な椅子と遜色ありませんね」

それを聞いたMさんが笑顔で答える。

「座り心地には拘っていますから」


そして、エンディングが近づく。

七海もカバンに詰められたまま、スタジオに帰ってきた。

撮影が途切れた後、交番に連れて行かれたスタッフは事情を説明し、お灸を据えられただけで帰された。


「長年、色々と尽力して頂いた紺野 七海さんと近田 由里子さんは今日で卒業となります、今までありがとうございました」

司会者とプロデューサーから、ダウンコートを着せられたままの赤いゴムの塊にされた七海と石膏で固められ椅子にされた由里子に花束が渡されるが、当然本人たちは受け取れない。


星乃 瑠璃と海野 光もコメントする。

「先輩方に負けないように私たちも体当たりで頑張っていきます」と。


司会者が思いついた様にMさんに聞く。

「あのー、まだラップ残っていたりしますか?」

「はい、残っていますがご入用ですか?」

司会者は大きく頷くとお願いする。

「七海ちゃんを由里子ちゃんの椅子に乗せて、ラップで一纏めにしてあげて下さい」

Mさんは少し動揺しながら聞く。

「そんな事しちゃっていいんですか?」

司会者は大きく頷いた。

そして、付け加える。

「花束も一緒にしてラップしておいて下さい」


Mさんはスタッフに協力してもらいながら、七海を由里子でできた椅子に座らせると、花束も巻き込んで一纏めにした。

七海も由里子も自分たちに今何が起こっているのか分からないまま、ひたすら待つしか術はなかった。






花束とともにラップで一纏めにされた七海と由里子はギリギリ見切れる位置に置かれた。

これはワザと2本撮りである事を視聴者に悟ってもらうため。


グラビアアイドル席には七海に代わり星乃瑠璃が座り、司会者の横には由里子の代わりに海野光が立った。


まず、新しい商品紹介のコーナーでは、特殊でエロい競泳水着が紹介される。

もはや人が変わればコーナーも形を変え、SMグッズでもなくなっていた。

光沢のある水の抵抗を極端に減らすことのできる競泳水着が紹介されたのだが、瑠璃も光すでに服の下に着込んでおり、服を脱いで司会者の横でポーズを取る。


その後もスパッツタイプのものや、長袖タイプのものが紹介され、その都度上から重ね着する形で着替え、競泳水着姿を披露した。




続いて【本日のフェチさん】のコーナー。

本日のフェチさんはゼンタイフェチのZさん。

色とりどりで、色々な柄のゼンタイがゼンタイを着たZさんが運んできた。


司会者やゲストも集まり一様に手にゼンタイを取り触っている。

もちろん、この後ゼンタイを着ることになる瑠璃と光も触っている。


Zさんが言う。

「ゼンタイは全身が覆われて誰か分からないので、本来の自由な自分が解放されます、そしてゼンタイの一番の醍醐味はスリスリ、お手元のゼンタイに腕だけ通して、隣の人の腕に触れてみて下さい」


そう言われて、出演者がゼンタイの腕の部分だけ長い手袋を嵌めるようにしてから、お互いの腕を触り出す。

「おおっ!」

「うわっ!」

「うふっ、いい感じ!」

皆がいいリアクションをする中、瑠璃と光はゼンタイを選び始める。


司会者がZさんに尋ねる。

「彼女たちにはどんなゼンタイが似合いますか?選んであげて下さい」

Zさんは濃い紫みの鮮やかな青色、いわゆる瑠璃色のゼンタイを瑠璃に、金色のメタリックのゼンタイを光に選んでくれた。


彼女たちは選んでもらったゼンタイを競泳水着の上から着用する。

ゼンタイ姿となった2人はポーズを取り、エンディングとなった。





2本撮りの2本目に拘束されたままの七海と由里子が映り込んでいる事に気づいた視聴者から人権侵害や虐待の声が高まり、ついには警察沙汰になった事で番組は終了となった。


グラビアアイドルとして崖っぷちだった七海を救ったのがこの番組であり、また由里子もテレビ業界の仕事にこだわり続け、この番組が最後の砦だった。

知らない間に降板させられ、番組がなくなった事で、芸能界、そしてテレビ業界を離れる事になった七海と由里子。


彼女たちはその後も親友として付き合っていく事になる。



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風俗店 ごむらば @nsd326

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