第45話 知育菓子って大人になっても面白い

「ねー、ミスティ」

「んんー?」


 仕事終わり、自室でミスティとだらけていた。ベッドで寝転がりながら目の前に浮かぶ透明なウィンドウを見上げつつ、SNSで流れてきた広告について聞いてみる。


「このさあ、あなたの夢を買い取ります。って胡散臭い業者?」

「ああ、それ普通に事業として成り立ってるわよ。夢を映像化して内容によって買取価格は違うし、小銭稼ぎくらいにしかならないけどね〜」

「えろい夢とか見たらどうなんの?」

「そっち方面はコアなファン居たりするから高値」


 そう言う夢を見た場合はAVだとかのように若干アングラな場所で取引があるのだそうだ。自分の見る夢を映像化できる。と言うのは正直興味はあったが、変な夢を見ても買い取りとかは頼みたくはないな〜。とその広告は見送る。次にやってきた広告は仮想世界についてだった。


「仮想世界ってこの惑星ってあるの? 地球の私の居た時代ではまだまだ広く普及はしていなかったけれど」

「昔は現実世界と区別つかなくなるヒトが居たりして、今は法整備されてあんまりリアルすぎるもの作ると罰金取られんのよ。でも夢売買もだけど、裏では出回ってたりする。違法なのはドラッグと同じような扱いになってるわよ」

「へえ〜」


 未来ってのは知らないことはまだまだあるものだ。にしてもSNSにこの前登録してみたが、結構面白いものだ。私が地球でやっていたのよりも派手、とでも言うか。誕生日だったりするとクラッカーがホログラムで現れたりだとか、まるで本物かと見違えるようなケーキが現れたりだとか。

 地球でもSNS依存症染みた時はあったので目新しいものには飛びつきたくなる性なのだ。ただ知識が無い故に変なのには引っかかりたくないとミスティに尋ねまくっていた。


「なんか目新しいものいっぱいで面白いなあ」

「アンタもうちょっと総督府の外に出た方がいいわよ。ボディガードは居るんだから」

「ヒューノバーでもいいんだけれど、ミスティとも遊びたいって言うか〜」


 今度どっか連れてってよ。とベッドに転がりながらミスティを見る。ソファで何か閲覧しながらだらけていたが、そうね〜と考えだした。


「ヒューノバー抜きにするとすれば、ランジェリーショップでも行ってみる?」

「何故そこでランジェリーショップが候補に……」

「アースの下着と結構使用感違うと思うでしょ? 今身に付けてるのとか」

「あー、うん、なんか結構快適ですね」


 下着は形こそそこまで大差はないのだが、着用感、締め付け感などあまり感じないので、あれ、下着つけたっけ? とたまに確認したりすることがあった。ノンストレスを歌っているのだろうが、逆にひやひやとストレスがかかっていた。


「でもま、暴動起こったしヒューノバーは連れて行った方がいいかもね〜。あいつ店の前に立たせときましょうよ」

「なんかタッパでかいから悪目立ちしてそうだな」

「それに〜、見せる相手を焦らしとくのもいいんじゃない? ねえ?」

「黙秘します」


 にやにやと笑いながらこちらを見るミスティに、手で顔を隠して対抗する。


「あのさあ、ヒューノバーの好みって分かりますか……?」

「案外乗り気ね。そうね〜、結構シンプルなの好きなんじゃないかしらね」

「ふうん」

「ミツミ、今度の休み空けときなさいよ」

「へい」


 その後二人してしばらく各々で過ごし、そうだ。とミスティが椅子から立ち上がった。


「酒買いに行きましょう」

「うわ、めんどくさ」

「どう言う意味よそれ」

「べっつにー」


 ミスティに腕を引かれ無理矢理起き上がらせられ、二人して売店へと向かう。廊下を歩きながら雑談をしていると、曲がり角を曲がってきたエンダントの姿を確認した。


「エンダントさん、こんばんは〜」

「ん? あ、ミツミさんに、ミスティさんか」

「どうも〜。技術今日は暇だったの?」

「まあそこそこ。暇だと今の時間にのんびり出来るからいいんだけど、繁忙期が怖い」

「そりゃそう」


 エナドリを買いに行くところだったそうで、体壊さないか心配だな。と思いつつも向かう先は一緒だからとエンダントも加え話をする。


「ミツミさんはミスティさんとは仲がいいんですか?」

「あー、なんか最初は結構馬鹿にされてましたけど、今は普通に仲いいですね」

「ま、馬鹿にはしてたわね確かに」

「そこは馬鹿になんてしてないわよって言って欲しかった」

「あはは! まー過ぎたことよ!」

「ヒューノバー、ミツミさん来たばかりの頃は結構心配してたんすよ。孤独じゃないかなとか」

「まああいつらしいわね。逸れものを輪にどうにか入れようとする辺りは」

「どうせ逸れものですよ」


 売店に着き、エンダントとは一度別れる。ミスティが酒を選びつつ、エンダントについての話になった。


「エンダントさんってヒューノバーの幼馴染なんだよね?」

「らしいけどね。私そこまで交流あった訳じゃないから養成学校時代にヒューノバーから幼馴染居るって薄ら聞いたくらいだし」

「仲良く総督府勤めになるとなれば、まあ結構仲は良いんだろうねえ」

「不摂生すぎてたまに面倒見てるとか言ってたわよ」


 そういえば前エンダントの部屋に訪れた際にもちゃんと飯食え的なことは言っていたな。ああいうタイプは周りが世話しない限り最低限の食事しかしないだろう。エンダント細いし確かに不安にはなる。


「ちょっとぷくぷくしてるくらいが安心するんだろうけど、多分太れないタイプだよなあエンダントさん」

「ひょろひょろもやしだとちょっとしたことで体調崩してそうで不安よね。その分ミツミはご飯もりもり食べるからいいわ」

「もやしだったら多分ミスティに世話焼かれていたんだろうな」

「私そこまで優しくないわよ」

「いや結構優しいでしょ」


 ヒューノバーとのことで協力してくれた時だってあったし、と呟くと、ただ単に野次馬精神で関わっていただけだった。と告げられる。


「まあ野次馬でも助かったのは本当だからさ。ありがとうねミスティ」

「そういうの面と向かって恥じずに言えるのアンタの長所よね……」

「褒められた」

「うん、まあ、褒めた」


 ミスティはつまみを選びつつ、私は菓子コーナーに向かって物色していると、あれがあった。あの練ると色が変わってふんわりとする……知育菓子が。思わず手に取って戻りミスティの持つカゴに突っ込んだ。


「は? なんでこれ選んだの?」

「懐かしくって……たまに食うと美味いんだよ。地球でもあったから……」

「……まあいいけど。ねー、これ確か新発売したやつあったでしょ? それ持ってきてよ」

「付き合ってくれるんですか!?」

「いや私も懐かしいから」


 つまみを選び終えたミスティと共に菓子コーナーに向かうと確かに新発売、と銘打たれたものがあった。ミスティがカゴに入れ、会計は自動で済むし、と袋詰めをして売店を出た。するとエンダントも丁度出てきたので三人で雑談しながら居住区へと戻る。


「エンダントさん、何買ったんですか?」

「エナドリと携帯食料バーを」

「あなたそんな食生活してたら体本当に壊すわよ」

「いやあ……今個人的に開発中のやつに集中したくて、食堂以外だとどうも手を抜きがちで」

「ヒューノバーが心配する気持ち、ちょっと分かるわね」


 その後エンダントとは別れて私の自室へと帰ると早速知育菓子で遊び始めた。水を用意し粉を容器に入れてねりねりとし、ここまでは地球のものと大差は無いな。と思っていたら変化が起こる。


「ウォー! 色が虹色に! もこもこがやばい」

「ちょっと待ってこっちもゲーミングカラーになってる! いやいやいや、ちょっと助けて! ボウル持ってきて溢れる!」

「うわー、めっちゃもこもこに……。ボウル無いからまな板で我慢して」

「まな板じゃ溢れる〜!」

「なははははは! ごほっ、ぶはっ」

「咽せて笑ってないで助けなさいよ!」


 二人してぎゃあぎゃあ叫びながら懐かしの知育菓子で盛り上がる。結局その後、売店で追加で出ている種類を買い漁り、酒を飲みつつまるで懐かしい友人と馬鹿をしながら盛り上がっているようだった。

 少しだけ故郷が恋しくはなったが、ミスティが居てくれるならきっとこの先も大丈夫だろう。夜は長い。二人で笑い合いながら夜は更けて行った。

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