『火星拉致』

やましん(テンパー)

  『火星拉致』 


 『これは、フィクションです。』







 借金はあまりしていない。ちょっとしかね。


 しかも、貯蓄でなんとか還せる範囲の額である。


 ただし、それは、そもそも、微々たる額である。



 なのに、あるひ、『借金返済のために、拉致する』と言われ、むりに重力麻袋に詰められて、そのまま、火星に運ばれた。


 もちろん、こいつは、違法行為である。


 犯罪に当たる。


 『かあかあ、からからから。犯罪だと。おれたちは、犯罪が仕事だ。文句あるなら、大将に言え。まあ、軍の偉いさんだし、まず、会えないがな。かんらからからからからから。』



 ぼくは、体調が良くない。


 腎臓が片肺である。


 しかも、すでに65歳を越えている。


 いつまで、生きるかわからないのだ。


 犯罪だろうと何だろうと、役には立たない。


 何をする気だろうか。



        🌏🌏🌏🌏🌏



 火星の開発は、まだまだ、始まったばかりである。


 当然ながら、火星には人類が普通に呼吸できる大気はないとされる。


 そいつは、ほんとらしい。


 大部分は、二酸化炭素らしい。


 自分で計りに行ったこともないし、図る機械もないが、本にはそう書いてある。


 ネットとかいうのは、使わない。


 ややこしいだけである。


 生物または、その痕跡は、いまだに見つからないらしい。そう、発表されているようだ。



         🌙🏢



 ぼくたち、地球のあちこちから集められた、アルバイトたちは、何時のまにやら、火星の地上に立たされていた。


 ちょっとした、まあ、つまり軽装備の宇宙服を着ている。


 プロが身に付けるものは、もっと込み入っているものだ。


 『いいかね、君たちは、一種の犯罪者である。ここで、軽作業をする。火星害虫の駆除である。やることは簡単だ。殺虫剤を散布するだけだ。ただし、たまに、害虫が出るから、そのときは、思い切り吹き掛けて、逃げろ💨。 それだけ。1ヶ月生き延びたら、地球に帰れる。食糧2年分を提供する。』


 ぐわぐわぐわ。と、みんながうめいた。


 なんだか、理に合わない話しだ。



        🐛🐛🐛🐛🐛


 

 確かに、やることは、簡単だった。


 宇宙服は、パワースーツになってるみたいで、殺虫剤のタンクも噴霧器も軽いものだった。

 

 軽作業に、違いない。


 毎日、決められた場所にゆき、殺虫剤を振り撒く。


 それだけだった。


 しかし、その、害虫というものは、まったくみない。



 食事は、まあ、あまりお金はない合唱団の、合宿の食事と思ったらよい。


 あさは、ごはんにおみおつけ、めざしに納豆か、味付け海苔。


 昼は、カレーライスか、スパゲティ。


 夜は、小さなステーキかハンバーグか、焼き魚定食みたいなかんじである。


 たぶん、冷凍食品だろう。


 お茶とコーヒーは、さんばいまで、おかわり自由。


 ごはんは、制限無しである。


 ただし、倒れない限り休めない。


 倒れたら、ほっとかれるらしい。


 死んだら、宇宙に投げられる、とか。


 噂では、だが。




         🐡


 

 ある日のこと、ちょっとした砂嵐がおこった。


 周囲が一瞬にして、見えなくなった。


 なにかが、起こったのだ。


 気がついたら、はだかで、手術台みたいなものに、寝かされていた。


 まわりには、虫さんたちがいた。


 ただし、体長3メートルはありそうな、やすでの怪物である。


 『ああ、あなた。我々は、火星の生き物れす。お願いさ、あります。我々は、平和に生きたいのれす。地球じんのみなさんは、あまりに、あちこち、かき回しすぎれなす。目につかないよに、我慢しましたが、やはり、限界というものがあらましれす。話し合いを求めましたが、きょひされたまでし。ぜひ、でていってほしい。しかし、我々は、殺しはやりません。めったなことでは。地下には、食糧になる、めだかてんぎだけ、がありまし、なんで、あなた、ぜひ、この、新製品、『にんげんばいばい』、を、基地内部で散布してくらさい。にんげんは、火星には、取りあえず、いられなくなりまし。あなたがた、いなくなったら、火星には、いっぱい、まきますまし。効果は半年のあたり。また、くるでしが、また、やりまし。我々は、基地に近寄りにくいれし。大気中にまかないと、あまり意味ナイス。あなたは、我々の無人宇宙船で地球に運びます。他のかたにも、やってくはるなは、今回は、宇宙船出しまし。ちなみに、無事に帰ったアルバイトさんは、いまだかつては、いないようれすよ。みな、宇宙に捨てられるしら。かならず。よれしく、たのんますし。』



 取り囲んだ火星の生き物が、すべての手足でお祈りを、してきたのである。



       🐛🐛🐛🐛🐛


 

 地球に帰ったぼくは、連中を告発した。


 違法行為をしていた、かなりの幹部は、逮捕されたらしいが、大将は、そのままのようだ。


 ある朝、麻袋いっぱいの何かが、玄関横に置いてあった。


 その火星の生き物から、火星の内部にあるらしき宝石を、成功報酬として、たくさん頂いたのである。


 しかし、これは、地球ではまだ知られていないものなので、ちょっと使いにくい。




         めでたしめでたし



   🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨🐨




 


 


 


 

 


 

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『火星拉致』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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