わたくしと結婚していただけますか?
西園寺 椿
第1話 プロポーズ
「わたくしと結婚していただけますか?」
彼女は俯いたままであった。
私の立場であっても好きな方と結婚したい。彼女は優秀だった。人としてまた、何においても。彼女を自分の人生に巻き込むことに抵抗はあったが、彼女を見るだけで自分の気持ちを抑えられなかった。
私は、将来この国の君主になる。それは、とても重く自分にのしかかっている。常に石橋を叩いて渡り、自分の意思だけでは行動できない。ここに生まれついたからには、自分ではなく、国民のために生きなければならない。自分の影さえも自分に襲ってきているように感じる。
私が彼女に会ったのは、仕事の時であった。外国への公務で私は疲れていたが彼女は言語を巧みに使い公務を進めるその姿に心惹かれた。その頃まだ女性の職務は少なかったが、男女を感じさせない素晴らしい人材だった。
彼女が笑うと自分も笑ってしまえるような気がした。私に常に乗っている重圧さえも感じさせなくしてくれた。彼女は、私には興味はないと思った。仕事を愛していることに気づいていたからだ。
彼女と仕事をしていくうちに私はどんどん心を惹かれ、彼女への思いが募っていった。まるで秋が深まり紅葉が落ちてそれがあるところにまとめられた山のように段々と私の気持ちは膨れていった。
彼女が自分のプロポーズに困ることははじめからわかっていたのだ。
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