魔法少女エモーショナルハイスクール

椎木結

第1話 誕生 マジカルフレア

 世界は魔法少女を中心に動いている。

 人類を無差別に攻撃する敵、メチャワルイヤーツが現れ、日常は非日常になり、化け物達に怯える日々だったが、それらは過去である。


 突如として現れた可愛く、賢く、可憐な衣装を身に纏った不思議パワーで世界を守る魔法少女が現れ怯え続ける毎日はなくなったのだ。



 そんな魔法少女と共に生きる世界で、魔法少女をサポートする人間を養成する場所『摩訶不思議高校』に通う高校一年生、ユウラギホムラも数いる魔法少女に憧れる青年の1人である。

 もはや魔法少女は女の子だけ、との固定概念は失われ、サポートする役割で様々な人種、年齢、性別が活躍している。未だに魔法少女に少女しかいないのは魔法少女所以であろう。仮面ライダーが仮面を被り、スーパー戦隊がスーパーなのと同じである。


 今日も今日とてメチャワルイヤーツがどれほどワルイヤーツなのかの講義を終え、一端の高校生としての知識を学んでいる最中である。数学だとか古文だとか英語だとか。

 あーあ、魔法少女になればこんな勉強も学ばなくて済むんだけどな、と良くある英雄願望を頭の中で思い浮かべながら板書を取る。


 福沢諭吉だとか伊能忠敬だとか伊達政宗とかもはや現代人にとってしてみれば本当の本当に過去の人間である。

 お金の人だとか歩いて地図を作っただとか独眼竜だとか知らん。ホムラにしてみればそれらは生まれた時からある日常であるし、今なのだ。昔を学ぶ理由が分からない、とかそんなくだらない理由ではないが、そんな過去の人間を学んで一体何になるんだって話だ。


 現実に、進行形で魔法少女って言うスーパーヒーローがいるんだ。故人を学ぶより、今を学ぼうぜって話だ。



 例えば、最近一ヶ月ほど前から活動し始めた新米魔法少女『マジカルアクア』である。

 深海のような深い青色の長髪は後ろで一つに結び、長い睫毛は彼女の表情を明るく照らす。海月のような衣装は彼女の良さを引き出すものであり、ひらひらとフリフリのハイブリットさは現代技術でも追いつけないだろう。洋服業界が血の涙を浮かべるだろう。

 圧倒的な容姿と、それを支える衣装。


 だが問題はそれだけではない。実力も相当高いのだ。

 知らないだけで魔法少女になるための秘密の訓練場があるのか、台頭して一ヶ月なのに圧倒的なマジカルウエポンーーー刀ーーーを器用に振り回し、メチャワルイヤーツけちょんけちょんにしている。現代の塚原卜伝と言っても過言じゃないだろう。見た事ないので分からないが。


 強さと可愛さを兼ね揃えた存在は認知しているだけでも十一人もいるのだ。もはやアイドルグループとして売り出した方が良いだろう、と思ってしまうほど大所帯である。

 身近なスーパーヒーローである魔法少女だ。


 そんな魔法少女にホムラは憧れている。


「(女になりたいとか、可愛い服を着たいって理由じゃない)」


 表面上は真面目に板書を取る模範生を醸し出して。


 脳内は一生懸命取り繕う。

 女になりたいわけでも可愛い服を着たいわけでもないのだ。『魔法少女』になって可愛い服を着たいのだ。

 可愛くて強いとかほぼ二郎系ラーメンみたいなもんである。何でもマシマシなら最強だって話だ。


 そんな夢があり、願望があり、欲望があるが故にユウラギホムラは倍率三千倍の超難関校『摩訶不思議高校』に入学したのだ。

 魔法少女を学び、魔法少女の近くに立てる職業に就くために。欲を言うなら魔法少女になれる資格を得る為に。


 情報社会である現代日本で、高度な情報規制が行われているのか魔法少女の素顔も素性も何も分からないのだ。その関係でどのようにすれば魔法少女になれるのかも分からない。藁に縋る気持ちであるが、現実で魔法少女が存在しているのだ。どうすれば良いかは分からないが、ゴールは見えているのだ。


 ユウラギホムラは優等生の外っ面を保ったままほくそ笑む。夢までは遠いが夢は逃げないのだ。追いたいだけ追える分まだ救いがある。








・・・・魔法少女 エモーショナルハイスクール・・・・






 超難関校であり、魔法少女のサポート役を育成すると言っても本質は高校である。将来は一般企業に就職したり、実家を継いだりと魔法少女のサポートーーー魔法補助者になる人間はそう多くない。摩訶不思議高校は六年制なのも加味して、卒業する頃にはそこら辺の有名大学よりも学業や社会生活に精通してたりするので就職にはある程度有利に進むのだ。それも選択肢の一つである。


 だが、そうであっても高校生活である。

 学業があり、日常があり、放課後がある。


 そんな日常の一コマ。夕焼けが顔を出している教室の中。

 ユウラギホムラは別に日直って訳でもないが、当日欠席した日直に変わり、明日の準備を率先して行なっていた。真面目って訳ではない。優等生でも無いが、魔法少女とは困っている人がいたら救うのだ。それに見境はない。


「いやぁ、すまんなユウラギ。今から会議があるから残りの作業任せていいか?」


「大丈夫ですよ、先生。会議頑張ってくださいね」


 そう言って笑顔で先生を見送る。


「お、おう」


 先生が吃りながら教室を後にする。頬が火照って見えるのは夕焼けのせいか、それとも。


 ユウラギホムラは美容にも気を遣う完璧魔法少女志願者である。その容姿は母親譲りの美人であり、父親譲りの大きく全てを見透かしていそうな瞳を有している。そこら辺の女性よりも可愛い自信が彼にはあった。

 先生を誘惑しても評価以上の利点はないので先生の引け目を適当に流して見送ったのだが。


 「さて、終わらせるか」


 日直の作業は板書の消去と黒板消しの清掃。チョークの補充とかそこら辺の雑用周りである。唯一の力仕事は生徒の机を定位置に戻す位であるが、そもそもが六年制の高校である。やんちゃな生徒はいるが、それでもある程度優秀であるのだ。粗相をする不利益は理解しているものが多い。

 多いってだけであるが。


「はぁ・・・またか」


 机の上には消しカスの山。恐らく授業中に書いてたであろう落書き。床には彼女の持ち物であるノートが散乱している。

 一年A組の中での粗相。ホダラアオイである。


 スレンダーであり、身長もそこそこにあるのだが青い髪を無造作に伸ばし、目元を隠したまま生活している彼女は高校生と言うより浮浪者と言い表した方が正解に近い。摩訶不思議高校に入学できている辺り、頭のレベルも特技も常人とは一線を画すレベルなのだが・・・


「自分のことは自分でやらないと元も子もないだろ」


 子供ではないのだ。

 そしてユウラギホムラは大人である。


 文句はまちまちに、彼女の机の落書きを消し、掃除し、ノート達を所定の位置に戻す。

 文句は垂れても良いが、人に聞かれたらダメなのだ。魔法少女は文句を言わないのだ。当たり前である。常識だ。


「マジカルアクアと同じ『青』なのにな」


 そんな事を呟きながら戸締りを確認し、教室を後にする。忘れ物は無く、窓に映るユウラギホムラは完璧である。ネクタイのズレも、制服のヨレも一切無い。

 教室の鍵を職員室に返却し、寮へと戻る。


 摩訶不思議高校は全寮制であるのだ。

 これも社会人としての育成の一環なのである。何事も早過ぎる事はないのだ。


 摩訶不思議高校に付随する形で建てられている上級生向けの寮と、下級生と成績下位の生徒が住む場外寮。


 付随寮はどんなものか分からないが、場外寮でさえ歩いて十分弱の位置にある高層マンションである。

 食事も洗濯もある程度の量であれば自動でやってくれる高級マンションである。まぁ、それでも付随する寮の方が待遇は良いらしのだが。どんなものなんだって話だ。


 努力すれば努力した分だけ返ってくる。資本主義の塊みたいなもんである。競争はより良い魔法少女を作り、サポートする為に必要なのでユウラギとしても不満は無く、むしろ手放しで褒めたいのだが


「付随寮にアオイが住んでるってのが気に入らないけどな」


 だらしない高校生活を送っている彼女が何故? とは摩訶不思議高校の七不思議の一つである。ユウラギ個人的なものであるが。

 人は見かけによらないのかなぁ、と何度目かの疑問符を抱きながら帰路を歩く。


 夕日はいつの間にか輝きを失い、仄かに暖かい春の風も姿を消す。残ったのは薄暗い街灯の光で照らされたアナザーワールドである。

 ユウラギは声を張る。いつだって心は魔法少女を抱いているのだから。迷いは無かった。


「この道をまっすぐ行けば摩訶不思議高校です!! まだ敵は見えていないので、冷静に落ち着いて避難をしてください!」


 親子と他校の生徒。小学生達である。

 日直の業務で遅れてしまった為、摩訶不思議高校の生徒はおらず、避難指示はユウラギ1人のみだ。逆に、日直で遅れたからこそ救える命があるのだと。気を改めながら避難誘導を行う。


 魔法少女がいる世界である。避難訓練は他校でも行われるし、ニュースの特番でも何度も行われる。若干のどよめきはあったが避難自体はスムーズに進む。

 一人、二人、と徐々にアナザーワールドからの避難が終わる。残ったのは制服をボロボロにし、地面に倒れている記憶に新しい彼女の姿だった。


「アオイ・・・? アオイ、何してるんだよここで!? てかその怪我・・・」


 近付き、応急処置を行う。

 患部を縛ったり、どうたらこうたらしていると聞き覚えのない金切り音と全身に悪寒が襲ってくる。一言で言い表すなら恐怖である。


 路地からゆっくりと出てきたのは、まるでお化け屋敷からそのまま出てきましたと言わんばかりの白装束にボサボサの黒長髪。足取りはフラフラで手首の血色は悪く、青白い。そして人間では無いと一目で分かる大きく歪な二対の蝶の羽根。


 ユウラギの表情は意外と固まっていなかった。


 いつだって焦がれていた魔法少女。ずっと調べていた魔法少女。いつかは成りたいと夢見た魔法少女。その宿敵である。

 もっとこう、日曜朝に流れる可愛い敵だと想像していたが、人類の敵である。逆にここまで殺意剥き出しじゃないと可笑しいよな、と笑ってしまう。


「ゆ、ユウラギ・・・逃げて」


 恐らくアオイも姿を見たのか途絶え途絶えな声でそう呟く。

 当たり前である。時代が時代、ユウラギがユウラギじゃ無かったら喜んで逃げていたである。そこまで相手は恐怖そのもので、気持ちが、気色が悪かった。距離にして十メートルはあるだろうか。相当に距離があるはずなのに目の前にいるかのような悪寒を感じるのだ。

 相手は普通ではない。異常だ。


 だが、ユウラギホムラは良い意味で異常である。


 一瞬で加速して近付いてくるメチャワルイヤーツに対し、ユウラギは手に持った通学用カバンを振りかぶって投げる。ボディメイクと課して筋トレを行なっていた成果が発揮される。

 コントロールは抜群。相手の顔面にクリティカルヒットし、少しだけ歩みを止める。

 その隙を見逃さず、ユウラギはアオイを抱き抱え、反転し駆ける。


「は、え、ちょ、ユウラギどうして・・・」


「黙れ!! 魔法少女は困った人は見逃さない、そうだろ!?」


 そう言って安心させるように笑顔を見せる。

 何故彼女がボロボロなのか。早くに教室を去ったのにここにいるのか。

 恐らく答えは摩訶不思議高校の生徒として、魔法少女を志す同志として、人助けに周っていたのだろう。

 ほらな、摩訶不思議高校は頭が良いんだ。頭が良いのにバカなんだ。バカだから魔法少女を目指してるんだ!


 アオイはユウラギの笑顔を見て、呆気にとらえる。そして少し笑う。


「ありがと。ユウラギって優しいんだね。魔法少女より魔法少女らしいよ」


 そう言ってアオイはユウラギの手を振り払って自分の足で立つ。


「お、おい怪我してんなら無理すんなって・・・?」


 ユウラギはアオイの手に刀のキーホルダーがついているスマホが握られている事に気付く。変なスマホだなぁ、と思うのと同時にアオイの言葉と表情が引っ掛かる。もしかして・・・いや、まさか・・・なわけ・・・。

 まるでマジカルアクアと同じ剣のアクセサリーを掲げ、アオイは振り返る。


「ユウラギが勇気を見せたのに、私が何も見せないって魔法少女失格だもんね。・・・逃げて」


 笑顔を見せ、敵の方を向く。

 手には剣のアクセサリーが施されたスマホ。構え、口をひらく。


「マジカルフォン『変身』」


 向かってきたメチャワルイヤーツを変身の声と共に溢れ出した水によって押し返す。


 アオイの腕は体は足は、まるで海月をモチーフにした衣装が徐々に纏い、水泡を破るようにして、刀を構えたマジカルアクアが現れる。


「マジカルアクア、お前を斬る」


 口上を一つ、アクアは刀を振り被って敵に走り出した。それと同時、ユウラギは二人を背にして逃げ出した。







・・・・魔法少女 エモーショナルハイスクール・・・・






「はぁ、はぁ、はぁ・・・マジかよ、マジかよ! アイツがマジカルアクアなのかよ!!」


 肩で息をするように、呼吸が間に合っていない中、冷めやらぬ興奮がユウラギを襲う。

 恋焦がれていた魔法少女がまさか、同じクラスにいるなんて。そしてあのアオイが魔法少女だなんて。


 凄いだけじゃ収まらない凄さがある。ヤバいだけじゃヤバさが言い表せないものがある。


 思わずニヤけてしまう自分の顔を手で押さえながらユウラギは冷静になろうと呼吸に意識を向ける。


 一つ、気になる点があるのだ。


 何故、マジカルアクアが変身を解いた状態でボロボロの姿であの場所にいたのか、だ。


 マジカルアクアと言えば今勢いに乗っている魔法少女筆頭である。一ヶ月前に現れた新参なのに、様々な敵を倒している事から相当な実力を持っていると話されていたのだ。そんな実力者がボロボロの姿であの場所に・・・? 他に敵が? いやそれは考えられない筈だ。普通では一度のアナザーワールドでは一体のメチャワルイヤーツしか存在しないのだ。それは常識である。それが習った話である。


「でも、もしかして二体居たら・・・?」


 敵はもう一体いて、その敵から逃げてる途中に別の敵と遭遇したのでは。

 もしかして、まさか、かもしれない。そんな想定を繰り返し、一つの仮説を確定させる。


「戻らないと」


 力になれるなれないじゃない。

 魔法少女を志願する一人の人間として、困っている人を見捨てる訳には行かないんだ。


 折り畳んで休んでいた体を立ち上がらせ、彼女の元に戻ろうと歩き出すと、ある場所から声が聞こえた。


「おぉおい。スルーしないでくれよぉ。おいらが一体何をしたって言うんだよぉ」


 後ろを見る。隣を見る。・・・頭上を見る。そこには赤い西洋風のドラゴンが居た。手のひらサイズのぬいぐるみで。ふわふわと飛翔し、不満げな表情でこちらを見ていた。


「なぁんでずっと声掛けてんのに無視すんだよぉ。ひどいじゃないかぁ。流石にドラゴンだって悲しくなるんだぜぇ」


「ご、ごめん?」


「うぉ!? なんだよぉ、聞こえてるなら聞こえてるって言ってくれよぉ! ずっと今で独り言を呟くドラゴンだったじゃないかぁ!!」


「ずっとって言われても・・・今君の声が聞こえたんだけど」


 そんな昔のカツオボイスで言われても聞こえてなかったものは聞こえていないのだ。にしても今日は物凄い日である。メチャワルイヤーツは初めて見るし、魔法少女は生で見られるし、クラスメートだし、ぬいぐるみドラゴンと会話してるし。


 手を伸ばし、思わず触ってしまったが手触りも良い。ふわふわでさわさわしてる。天日干しを欠かしてないに違いない。

 手触りを堪能していると、ぬいぐるみドラゴンがしたり顔で呟いた。


「そうか。今聞こえたのかぁ。って事は今、この瞬間に君は魔法少女としての素質が生まれたんだよぉ。おめでとう、魔法少女に憧れる少女としてではなく、魔法少女として戦えるよぉ」


「今!? この瞬間!?」


 思わず叫んでしまう。周りに人がいないので幸いだった。

 何故今? と思ってしまうがそんな些細な事はどうでも良い。降って湧いたチャンスである。このチャンスを不意にする程ユウラギはバカではない。チャンスの前ではぬいぐるみドラゴンの気になる言葉も無視する。


「そう、色々と説明とか契約とかあるんだけどぉ・・・」


「なる!」


「へ?」


「だからなる! なるぜ魔法少女に!!」


「・・・うへぇ。やる気あるのは十分だけどぉ、ありすぎるってのも困りもんだねぇ。まぁ良いけどねぇ」


 そう言ってぬいぐるみドラゴンはちぎりパンのような手で指パッチンをし、一枚の紙とペンを出現させる。


「取り敢えず契約書。そこに諸々書いてあるから読み終わったら一番下にサインしてねぇ」


「はい」


 署名した紙とペンを差し出す。それを苦笑いで見るぬいぐるみドラゴン。結果的に署名をもらえたらそれで良いのか、深く言わずに懐からマジカルアクアが持っていたようなスマホを渡される。アクアと違うのは全体的な色が赤なのと、付けられているアクセサリーが指抜きグローブって所だ。


「相変わらず早いねぇ。まぁでもこれで君も魔法少女だよ。はい、マジカルフォン」


「これが・・・へ、変身ってどうすれば」


「早速だねぇ。僕としてもアクアの活躍は応援したいところだもんねぇ。良いよぉ。自分の頭の中で魔法少女を思い浮かべて、」


「おう」


 強く、輝いて、誰もが憧れる魔法少女。

 強く頭の中で想像する。


「浮かべた状態で『変身』と言えばそれで大丈夫だよぉ」


 女になりたいわけでも、可愛い服を着たいわけでもない。ただ魔法少女になって可愛い服を着て戦いたいだけなのだ。

 そんなユウラギホムラの願望を反映してマジカルフォンは輝きを増す。


「・・・『変身』!」


 一瞬で当たりを眩い炎が埋め尽くす。

 全身を覆った炎に驚きながらぬいぐるみドラゴンは大慌てて避難する。


「ちょ、ボクぬいぐるみだから! ぬいぐるみだから燃えちゃ・・・う? あれ、熱くない?」


 熱くない、むしろ暖かい炎に包まれながらユウラギは魔法少女になる。


 鈍い赤色だった髪は、灼熱の真っ赤へと染まる。ミディアムの長さの髪は熱によって外ハネへと変貌遂げた。大きく見透かす瞳も赤く染まる。全身を覆うは赤いベールで、必要最低限の箇所だけ布と鎧の混合で身に纏った姿はクールビズ女騎士と言い表して良いだろう。

 しななやか体は男の骨格を全て無くし、か弱く、だが強かさを持つものに変貌させた。


 赤いヒールを地面にカッと振り下ろし、身に纏った炎を消す。


 赤と白の指抜きグローブ。ヒトデの髪留め。動きやすいような要所だけの鎧。動けば、風が吹けば見えてしまいそうな衣装は魔法少女パワーで保護される。


「魔法少女マジカルフレア誕生だよぉ」


 ぬいぐるみドラゴンの言葉を背後にユウラギーーーホムラは走り出す。建物から建物へと。向かう先はアクアである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る