第4話 水晶の真実

アストレアに話したいことがあると言われ家に向かってしばらくあるき、家の玄関の前まで到着し、僕は少し思うところがあり家に入る前に立ち止まった。


「アストレアってパートナーなんだよね?」

「・・・ええ。」


アストレアはキョトンとしながらも頷く。


「じゃあ、ちょっと隠れておける?君のことはまだ親には隠しておきたいんだ。」


僕がそう言うと、「なるほど。そういうことでしたら。」とアストレアは言った後に、”シュン”と手のひらサイズまで小さくなり、僕の手のひらに飛び乗った。


パートナーはテイマーの影に隠れたり、アストレアのように小さくなったり出来、普通のパートナー関係の場合その状態で一緒に活動したりすることが多い。


僕は小さくなった彼女を両手で包みながら、家の中に入っていった。


「ただいま~」

「あら、おかえりなさい。表情少し明るくなったわね。やっぱり散歩が良かったんでしょ!!」

「う、うん。母さんのアドバイスのお陰だよ。ありがと。」


散歩ということで出かけたことは、今日一日で起こったことが濃すぎて忘れていたため、返事が雑になりそうになったが、手の中にいるアストレアに気づかれないように何とか言葉を絞り出す。


「ご飯そろそろ出来るけど食べる?」

「いや、今日はもう疲れたから部屋で寝るよ。」

「そう、おやすみ。」

「おやすみなさい。」


僕はそう言ってお母さんから逃げるように、急いで自分の部屋に向かい、扉の鍵を閉めた。


そして、机に小さくなったアストレアを置き、僕は椅子に座った。

アストレアはこちらを向いて正座をすると、ゆっくりと話し始めた。


「はじめに、わたくしの事からお話します。先ほども申し上げた通り、わたくしはパートナーランクSの女神、アストレアであなたとパートナー契約をしました。」

「ちょ、ちょっと待って、、、」


はじめから僕は気になることがたくさんあるのでアストレアの話を遮り、僕の知りたいことを一つずつ聞いていく。


「まず、僕はついこの間、水晶が割れてパートナー契約を失敗し、パートナーがないと告げられたんだ。なのにどうして、あの時あの場所で君が召喚されたんだ?」

「いい質問ですね。」


俺が質問するとアストレアは俺を指さしてそう言った後に咳払いをして、話し始める。


「あなた方は、勘違いされておられます。パートナーが召喚される条件は三つあり詠唱、魔素、そして負の感情です。水晶はただの媒介でしかありません。水晶が割れてしまうのは、パートナー召喚のための魔素が急激に水晶に集まることで水晶が耐えられなくなるからです。割れてしまう方がむしろ良いのです。」


僕は黙って彼女の話を聞く。


「詠唱者と周囲の魔素さらに詠唱者の負の感情の量が多ければ多いほどランクの高いパートナーが召喚されます。ミドル様はあの時負の感情がとても大きくなっていたのと、最下層である、あの場所の魔素の量が多かったため、ランクSのわたくしが召喚されたのです。」

「それじゃあ、儀式で水晶が割れたのは?あの時僕は負の感情なんか無かったはずだけど……。」

「あの時水晶が割れたのは恐らくミドル様自体の魔素がとても大量だったためだと思われます。」

「なるほど。僕ってそんなに凄いのか?」

「はい。先に行っておきますと、パートナーのランクはSが最高でその下がAと続きます」


話を聞いていくうちに点と点だったものが一つの線になっていく。


「さらっと言ったけど、あの場所って最下層だったんだ、、、、」

「はい!」

「ということはダンジョン攻略したのは僕ということになるのか?」

「はい、そうなりますね。」

「・・・・・・・。」


僕とアストレアは沈黙のまましばらく見つめ合う。


「とんでもないことやってんじゃないか!!!!」



自体の重大さを悟った僕は大声で怒鳴った。

その声を聞いてか、そののちすぐに、部屋のドアがノックされる。


「ミドル、大丈夫?何かあったの?」


大声を聞いて、心配してきたお母さんだった。


「だ、だ、大丈夫だよ。ちょ、っちょっと夢を見ただけ。」

「そう。ならいいのだけど。」


そう言って、離れて行くお母さんの足音を確認してから再び少し小声で話に戻る。


「どうすんのさ!!ダンジョン攻略した人、僕なんて絶対信じてもらえないし。でも、僕が名乗り出なきゃ誰も出てこないし。なんで倒しちゃったんだよ!!」

「仕方ありません。ミドル様に怪我をさせたケダモノなど生かしてはおけません。それに、パートナーが討伐したものは、すべてそのテイマーの実績になるんですから倒したのは、わたくしじゃありません!」

「そんな屁理屈が通用するか!!」


僕はそう言いながら、小さな彼女をデコピンする。

デコピンを食らいアストレアはふらふらと机の上をさまよった。


「ふぁーとなーはていまーになしゅりつけることができるので、ありますっ!」


そう言いながら、彼女は仰向けに倒れた。

パートナーはテイマーに擦り付ける……。


その瞬間、僕は解決方法を閃いた。

その解決方法を明日実行するため、今日はもう寝ることにした。


倒れているアストレアを持っていたぬいぐるみの上に乗せ、タオルをかけて寝かせた。

僕も、ベッドに横になり電気を消し眠りについた。


僕の長い長い一日がようやく終わった。

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