第2話 デュボワース家にて

 フェラン王国の城下にある大通りは王国仕えの役人や聖騎士達が居を構え、治安がかなり良い地域なので商売も繁盛し、賑やかであった。その地域の一画に聖騎士のトップ、ジャックス・フェイ・デュボワースの邸宅があった。ジャックスは十歳で見習い聖騎士になり、その後めきめきと剣の腕を上げ、聖騎士となるためのトーナメントをわずか十七歳で勝ち上がり、聖騎士となった。二十歳で宮廷魔術師だったフローレン・ニルヴァと結婚したが、なかなか子に恵まれなかった。しかし、結婚して七年目にしてフローレンが身ごもり、ついに出産の時を迎えたのである。フローレンの友で宮廷魔術師の同僚のキャスティーラ・マンレーンが手伝いに来てくれ、フローレンは陣痛の苦しみに耐え、元気な女の子を無事出産した。ところが、ジャックスは子を見て驚いた。娘の額に青の十字架があったのだ。「この子は何と言う過酷な運命を持って生まれてきたのだ…。」ジャックスは冷静を保ちながらも内心動揺するばかりであった。その同じ頃に神殿でも不思議な事が起きていた。大神の御使いが神殿の拝殿で神の箱を見張りしていた神官見習いの少年の前に現れ、「青きクロスの子が王国に降りかかる災難を消し去り、国に平和をもたらすだろう。」と告げたのである。少年は慌てて大神官の元に走り、自分の身に起こった事を事細かに話した。大神官は直に国王の元に行き、全てを報告した。国王は「一体どのような災難が降りかかると言うのか…。まさか、今流行りの新興宗教とやらが関わるのか?」と憂い、大神官や役人達に御使いが告げた災難が何なのかを調べるように申し渡した。そして事がはっきりするまでは民には何も告げるなと口止めさせた。しかし、災難が降りかかる時間はそう遠くないのであった。フェランから遥か遠くにある国でとんでもない事が起きていたのである…。

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