第138話 1000億ポイントを手に入れる方法

 それから三日はあっという間に経過する。


 次の戦いに備えて身体を休ませると同時に妹の由里を始めとした家族ともある程度の話をした。


 と言っても異世界からの帰還者であることは語らず、あくまで最初に魔物を倒したことにより色々と特典を得たことで活躍しているという風にだが。


 また聖樹の居住区に避難させていた美夜の両親とも密かに会ってきた。


 実は彼らは俺の家族を避難させるタイミングで、こっそりと一緒に聖樹に移動させておいたのだ。


 俺が美夜を生き返らせた時、その家族が失われているということがないように


(とは言え、かなり気落ちしていたな)


 この状況下でずっと娘と連絡が取れないとなれば、どうなってしまったのかを考えるのは難しくないだろう。


 それはつまり彼らからすれば、飛行機事故から奇跡的に戻ってきてくれた最愛の娘をまたしても失ったことに他ならない。


 一度は奇跡の再会をして希望を得てしまったからこそ、押し寄せる絶望も大きくなってしまうのだろう。 


 それでも一縷の希望を信じて、どこかで娘が生きているかもしれないと気丈に振る舞う美夜の両親。


 そんな二人に対して実は美夜が死んでいて、だけど俺が絶対に蘇らせるから待っていてほしい……などと言えるはずもない。


 だから俺に出来るのは、諦めずにその希望を信じようと励ますこと。


 そしてその希望が現実のものとなるように美夜を生き返らせることだけだった。


(だとすると、そろそろ1000億ポイントを貯める算段も付けたいところだな)


 今でも考えられる方法は幾つか存在する。


 一つは前にも考えたことのある、御霊石を大量に手に入れることだ。


 当初は御霊石一つで10000ポイントだと思っていたので、単純計算で1000万人分の御霊石が必要だと考えていた。


 だが後にランクが上昇した御霊石から得られるポイントが増えることが判明している。


(これまでの戦いで犠牲になったランク3の自衛官の御霊石が30000ポイントで売却できるって表示が出たらしいし、だとするとランク×10000のポイントが御霊石では手に入るはず)


 つまりランク5の覚醒者の御霊石なら50000ポイント。

 ランク10なら10万ポイントが手に入る訳だ。


 そして聖樹のダンジョンで鍛えている自衛官は、魔物を倒す度に経験値を溜めてランクも上昇している。


 そんな彼らの御霊石を全て消費すれば1000億には届かなくとも、ポイントという意味だけなら目標達成のためにかなり近づけることだろう。


 聖樹のダンジョンにいるのなら主である俺が念じるだけで牢獄に収監できるし、やり方次第では全員を始末することも難しいことではない。


 と言っても流石にこれをやる気にはなれないが。


(大事な戦力である覚醒者を刈り取るほどに人類陣営が不利になるからな)


 またそんなことをしたら俺は人類の敵となるだろう。


 それで仲間割れが発生しているような状態で邪神陣営に勝てるとは思えないし、それでは美夜を生き返らせても意味がないのだ。


 なのでこれは却下。


 次の案は各聖樹のダンジョンで魔物を狩り尽くすことだろうか。


 現在の聖樹は各自、一日で600体の魔物を作り出すことができる。


 つまり6本全てを合わせれば3600体。


 これを毎日独占して狩り尽くすことで、大量の魔石をこの手に収めることは可能だった。


(でも仮に一体で10000ポイントが手に入るオークキングでそれをやっても、1000億ポイントを貯めるのには果てしない時間が掛かるな)


 3600体で3千6百万ポイントなので、大体2778日ほど必要になる計算だ。


 しかも各聖樹で作り出せる魔物は捧げたダンジョンのマスターキーによって違うものになるので、実際にはもっと時間が掛かってしまうのである。


 オークダンジョンでは一体で10000ポイントのオークキングを出現させられるが、影法師ダンジョンでは一体1000ポイントの影法師しか作り出せないのだから。


 それに現状では聖樹のダンジョンは戦力状況のために利用する必要があるので、数日くらいならともかく何ヶ月や何年も独占するなど現実的とは言えない。


 あるいは設置される聖樹の数がもっと数が増えて、更にオークキングよりも多くのポイントが得られる魔物が作るようになれば話が変わってくるかもしれないが、そんな仮定の話を今から当てにするのは愚の骨頂というものだろう。


(……現状だと1000億を貯めるのは不可能と言わざるを得ないか)


 諦めるつもりなど毛頭ないが、それでも今の状況では困難であると認めるしかない。


 それこそ後先考えずにこれら二つの方法を強行しても、1000億ポイントという目的を達成するには至らないだろう。


「やっぱり今は地道に世界各地で聖樹を設置していって、その数を増やすしかないか」


 聖樹の数が6本では無理でも60本なら、あるいは600本となれば作れる魔物の数も桁違いとなる。


 それにそれだけの聖樹が設置されているとなれば、人類の状況も今よりも改善しているはずだった。


 それこそある程度のダンジョンを俺が占領しても問題ないかもしれないくらいに。


 またダンジョン攻略による特典でスキルのレベルが手に入ったり、または所有しているスキルのレベルが上がったり、果ては地竜が与えられるなどショップのアイテムが入手できたりする事例も存在している。


 だとしたらもしかしたら何らかのスキルが手に入るような特典も用意されているかもしれないではないか。


 それで偶然蘇生スキルが手に入る可能性は万に一つよりも低いかもしれないが、それでも可能性があるのなら試しておいて損はないだろう。


(どうせダンジョン攻略は俺がしなければならないことだからな)


 あるいは何度も何度もダンジョンを攻略して特典を得ている内に、その内容が豪華になっていくとかもあり得ない話ではないかもしれない。


 多くの功績を残せば残すほど、与えられる褒賞もそれ相応のものになるとかで。


 そうして好きなスキルがどれでも一つ手に入る。そんな特典があることを信じながら、今後も聖樹が設置しながらポイントを貯めていくしかないという結論に落ち着くのだった。




現在の各聖樹の機能

貯蔵限界 160億

一日の生産 600万

魔物の作成数 600体

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