第106話 自衛隊の戦力分析と合流ポイント
突如として行動範囲を広げた魔物によって侵攻を許してしまっている沖縄本島。
自衛隊や米軍のおかげもあってまだ完全に支配されるまでには至っていないが、この調子ではそうなるのも時間の問題だろう。
(そうなる前にダンジョンを攻略しないとな)
自衛隊から大まかな話を聞いたことで危険地帯へと向かうことにした俺と叶恵だったが、それに同行するメンバーが他にもいた。
そのメンバーとは自衛官の中でも覚醒者となっている強者。あの場において俺と叶恵を除けば精鋭とされていた自衛官達である。
その彼らが運転する複数の車に分かれて乗っている俺と叶恵だが、思っていた以上に自衛隊の中の覚醒者の数は多くはないみたいだった。
『自衛隊員は魔物を銃で撃ち殺しているだろうから、もっと覚醒者の数が多いかと思ってたんだけど違うみたいだな』
念話で別の車に乗っている叶恵に話しかけるとすぐに返事がくる。
『魔物を殺して覚醒者の資格そのものを手に入れている人材はもっといるでしょ。だけど戦闘の混乱とか避難誘導を優先してたとかで、ドロップしたステータスカードを放置せざるを得なかった隊員も結構いるのよ』
『あとは銃で戦ってたのもその原因の一つかもな』
銃などという強力な武器で遠距離から敵を殺せるからこそ、そいつが初めて魔物を倒した際にドロップするステータスカードを見逃してしまったのだろう。
そう言えば初期の頃、東京でもステータスカードを回収していない自衛官が多かったものだ。
だからこそ俺が回収できる範囲で回収して渡したこともあったっけ。
彼らからすれば、その当時ではステータスカードの重要性が判明していなかったのだろう。
それを考えれば回収していなかったことも仕方がないのかもしれないが、ステータスカードを所持していない彼らは今後スキルなどを手に入れられないことになる。
なにせスキルを入手できるショップもステータスカードから利用するのだから。
(ステータスカードは聖樹の種と同じで破壊不可だから魔物を倒したどこかに落ちているはずだけど、紛失したら現状だとどうしようもないのが厄介だな)
ステータスカードを所持していなくても魔物を倒した経験値は無駄にならないのか、ランクアップによるステータスの増加らしき現象は確認できているとのこと。
だがそれで強くなれる量には限度があるのもまた事実。
『と言ってもステータスカードを回収しているメンバーですら、ダンジョン攻略が可能かと聞かれれば難しいだろうけどな』
『難しいってか、どう考えても不可能でしょ。ゴブリンダンジョンでも全滅しないで誰か一人でも戻って来られたら御の字ってところね』
襲い掛かってくるガーゴイルに対処する腕を見て俺達はそう判断する。
数が少なければ銃弾の雨霰でしっかりと敵を処理しているのは流石の練度と言えるだろう。
この分だと瞬間的にはゴブリンやオークと戦っても良い勝負ができるかもしれない。
だが様々な敵の妨害が施されたダンジョンを攻略できるとは到底思えなかった。
(ショップで銃弾とかを補充できればワンチャンあるか? いや、ゴブリンキングとかオークキングとか相手だと、この程度の銃弾はあまり効果がないか)
それこそ戦車の砲撃とかなら討伐できる可能性はあるかもしれないが、それを敵が許してくれるとは思えない。
そもそもオークダンジョンだと狭くて戦車なんて持ち込めなかっただろうし。
なによりダンジョン攻略は最大でも24時間という時間制限があるのだった。
俺には無尽蔵の魔力などのユニークスキルがあったからそれがさほど問題にならなかったが、普通ならその条件は非常に厄介で攻略の大きな妨げとなるのは間違いない。
(やっぱりダンジョン攻略は俺達でどうにかするしかないな)
少なくとも現状では他に頼れる相手はいないと思っていた方が賢明というものだろう。
「草壁隊長、間もなく合流ポイントに到着します」
そんなことを考えている間に目的地が近づいていたようだ。
そんな会話が前の方から聞こえてくる。
「別動隊からの連絡は?」
「今のところは問題ないようです。ただ怪我人がいるようで、早急な治療が必要かもしれないとのことです」
「怪我人か。ヘリや船の数も限られているし、全員を一気に運ぶのは難しいかもしれないな」
やはり重傷の者から順番に運ぶしかないか。
そんな風に今後の動きについて自衛官は色々と考えているようだった。
目の前の草壁隊長の部隊が民間人を避難させていたように、他にも同じようなことをしている自衛官がいる。
今回はその別動隊と合流して、速やかに保護されている民間人を避難させることとなっていた。
こちらとしても犠牲を減らせるならそれに越したことはないし、合流ポイントは船着き場よりも危険地帯に近いのだから手間も掛からないので。
(それにしても危険地帯に近づいているせいか周りで動き回ってる魔物の数が段々と増えてきてるな)
今のところは俺や叶恵が際立った活躍を見せなくても自衛隊は襲ってくるガーゴイル相手に問題なく対処できている。
だがそれは守るべき対象を抱えていないからに過ぎない。
これで下手に移動させている最中にこの数で襲われたら、それこそ船着き場の時のように防衛線を突破されてしまうかもしれない。
それを避けるためにもある程度、周辺の魔物の数を減らしておいた方がいいだろう。
そのためにも身を守れる拠点が必要なのだが、それについては合流ポイントでどうにかなるのだそうで。
「どうやら我々が先に到着したようですね」
「よし、ここで別動隊の到着を待ちながら防衛のための陣地を設営するぞ」
そうして到着した場所、それはなんと魔力スポットだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます