第49話 ゴブリンダンジョン攻略へ

 手に入れたゴブリンダンジョンの鍵の使用期限は今日までとなっている。


 つまり今日が過ぎればまた鍵を手に入れるところからやり直す可能性が高いので、その前に決着を付けるに越したことはない。


 国会議事堂の時と同じようにショッピングモールの侵入者を阻む結界に鍵を差し込む。


 すると前の時と同じように結界は砕け散った。


(あそこか)


 ショッピングモールなので幾つか入り口がある中、一つの自動ドアが誰もいないのに動いて開いている。


 その様子はまるでこちらを歓迎するかのように。


 まあ実際にはかかってこいという挑発の可能性の方が高いかもしれないが、なんにせよここまできて行かないという選択肢はない。


 だから俺は決して怯むことなくその自動ドアを通過して中に入っていき、


「……ダンジョンは迷宮のような場所ばかりじゃないのか」


 何故か目の前には見渡す限りの草原が広がっていた。


 後ろを振り返れば入ってきた自動ドアだけが明らかにこの草原の中に場違いな形で存在している……と思ったら勢いよく閉まって消えていった。


 これも前の時と同じだし侵入者を逃すつもりはないらしい。


 その考えが正しいかのように、周囲から敵が続々と迫ってきているのが分かる。その数は百や二百では済まない。


「数の暴力で圧し潰そうってか」


 視線の先には第一波の群れが見える。


 通常種のゴブリンだけでなくゴブリンソルジャーやゴブリンシャーマンなどの進化した個体もかなりいるようだ。


 そしてゴブリンアサシンがその集団を囮にするかのように背後からゆっくりと近づいてきているようだ。


 何故そんなことが分かるのか。それは新しいスキルである生命探知のおかげたった。


 クーに言われた通り隠形を見破れる5000PのスキルをレベルⅢまで上げており、範囲内の生物の居場所が手に取るように分かるのである。


 これと超聴覚があれば、余程高レベルの隠形でなければ見破れるはずである。


 そして新たに手に入れたスキルはこれだけではない。


 それを証明するように俺はそのスキルを発動する。


 足元に展開される青白い魔法陣。


 そこに無限魔力と魔力譲渡を利用してMPを流し込んでいき、発動するのに十分以上なエネルギーを満たしていく。


 こちらもレベルⅢまで上げており、そのおかげもあってこれから放つものは範囲攻撃となっていた。


「アイスストーム」


 氷結魔法。


 火炎魔法と同じように5000Pのスキルであり、MPを消費することもあってかなり強力な威力を誇るスキルである。


 しかも魔法は魔法陣にMPを流し込む際にその量を増やせば増やすほど威力や数、あるいは攻撃範囲などが強化される仕様だったのだ。


 本来なら大量のMPを一撃に込めることは難しい。


 それでMPが枯渇してしまえば、いざという時に他のスキルが使えなくなるからだ。


 だが無限魔力を持つ俺にとってMP枯渇など存在しない。


(やっぱり魔法と無限魔力の相性はかなりいいな。あっちでも魔法が使えればどれだけ楽だったことか)


 幾ら努力しても使えなかった過去が懐かしいものだ。


 もっともスキルレベルによって込められるMP量の上限は決まっているようだが。


 レベルⅠで10、Ⅲでは30が最大だったので恐らくレベル一つにつき10までが上限だと思われる。


 つまり今の俺の魔法の最大出力は30となる訳だ。


 そのMP30が込められた氷結魔法であるアイスストームを俺は近付いてきている集団に向けて解き放つ。


 敵の集団の中心付近を起点として発動した氷の嵐は瞬く間に敵であるゴブリン共を凍りつかせていく。


 ゴブリンソルジャーなどの進化した魔物だろうが関係なく、全てが氷の彫像となるのに時間は掛からなかった。


 そしてそれで命の火は掻き消えたのか、氷の彫像のまま魔物は光の粒子となって消えていく。


 その場に存在した痕跡である魔石だけを残して。


 それを確認しながら俺はインベントリから銃を取り出す。


 ただしそれは通常のものではなく、魔導銃という敵が持っていた例の代物だ。


 外見はウィンチェスターライフルという奴に近いだろうか。


 ただし引き金はあっても銃弾を込める箇所がないなど完全に同じではない。


 その銃口を徐にある方向に向けると弾を込めることなく引き金を軽く引く。


 すると銃の中に溜めておいた魔力の一部が銃口に集まり始めた。


 そしてある程度のところまでチャージが完了したのを確認すると、今度こそ完全に引き金を引き絞る。


 そのタイミングで銃口からパンという乾いた音と同時に魔力でできた弾丸が放たれた。


 魔導銃の名の通りというべきか、この銃は魔力を弾丸にして発砲するのである。


 そして魔法と同じように上限はあるものの、チャージした魔力に応じて威力や射程が強化されるのだ。


 無限魔力のおかげで十分な魔力をチャージされた魔力の弾丸は勢いよく進んでいき、狙い過たず隠れていたゴブリンアサシンの額に命中すると容赦なく貫く。


「いいな、これも俺に合ってる」


 必要なのがMPなのもそうだが、遠距離からでも敵を倒せる上にこちらは魔法と違って発動までそれほど時間が掛からないのが良い。


 前もって魔力を込めておけばそれがなくなるまで打ち続けられるようだし。


(魔力を込めるのも俺の場合は時間が掛からないも有難い)


 例外的に俺は魔力譲渡があるおかげで簡単に魔導銃の銃弾となる魔力を込められるが、普通はそれなりの集中力と時間が必要になるようだ。


 つまり弾切れになればリロードが必要になり、その際に隙が生まれるのは普通の銃と変わらない形である。


 そしてその隙などを補うのがオートリロードというスキルなのだろう。


「うん、どれも悪くないな」


 レベルⅢまで上げた5000Pスキル、そしてこの魔導銃を合わせて10万Pくらい使った甲斐はあったと思う。


 これなら仮に先程のような集団がきても対処できるだろうし。


(それにしてもボスはこの広い草原のどこかにいるのか? それとも雑魚を倒さないと出てこないとかもあり得るのか?)


 それも分からないので周囲を探索しながら確認するしかないだろう。


 何かあった時のために脱出ポイントも見つけておきたいし。


(魔闘気は切り札に取っておきながら進みますかね)


 今のところゴブリン相手なら進化した個体でも魔闘気を使わなくても問題なく対処できていることもあって、俺は新たに手に入れた武器も駆使しながら敵を倒していくのだった。





大まかなポイント推移

御霊石 10000×2=20000

氷結魔法レベルⅢ -35000P

生命探知レベルⅢ -35000P

魔導銃   -25000P

その他ゴブリンの魔石で微増


保有ポイント 299270P

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る