第30話 奉納者と攻略再開

 脱出石によってダンジョンの外へと出ることが出来た俺は、すぐに念話で茜達と情報を共有した。


 万が一、俺が死んだとしてもそれまで得た情報を持ち帰って次に繋げるためにも。


(特に神の加護とやらで新しく手に入れたジョブはどう考えても重要だからな)


 脱出石は消費アイテムのようで一度使えば無くなってしまった。


 だから次の時のために新しい物をショップで購入した際にステータスカードに、妙なものが追加されているのに気付いたのだ。


『真咲 譲 ランク7

HP  56/56

MP  0/0

STR 37

VIT 33

INT 111

MND 38

AGI 59

DEX 48

LUC 27

ユニークスキル 無限魔力 魔力譲渡 界渡しの灯 空間跳躍

スキル インベントリ・レベルⅠ 身体能力強化・レベルⅡ INT上昇・レベルⅥ 念話レベルⅣ 超聴覚レベルⅡ 魔闘気レベルⅡ

ジョブ 帰還者 奉納者

保有ポイント 412260P

ショップ

奉納』



 いつの間にか手に入れていた新しいジョブの名前は奉納者。


 その名前からして脱出ポイントでMPを奉納したことが何か関係しているのは間違いないだろう。


 ただし奉納者も奉納のコマンドも他のものと違ってグレーアウトしており、今は使えないことは確認できている。しかも奉納者に至っては選択した際に、


『奉納者の力を解放するためには更なる奉納が必要となります』


 という謎の声での駄目だしまでくる始末。奉納の方は選んでもブーという音がなるだけたったのに。


(なんにせよ、現状だと情報を集めながら解放するよう努力するしかないな)


 そもそも奉納とは何なのか、どこでなら奉納が出来るのか、神の力が回復すればどうなるのか、などの重要そうなことは芹沢先生のユニークスキルが使用可能になるのを待って調べてもらうしかないだろう。


 今のところはそれ以外で分かりそうな手段も見つかっていないので。


 そうして俺がいなくても大丈夫なようにダンジョン内で手に入れた魔石を先生に譲った後、俺はダンジョンへと戻ってきた。


 幸いなことに脱出ポイントはセーブポイント的な役割も担っていたのか、そこから再開することが可能だったのは助かったものだ。


 でなければまた入口から探索をやり直さなければならないところだったので。


 そうして俺はダンジョン攻略を再開する。進めば進むほど魔物の数が増えるが、魔闘気のスキルを十全に発揮できればどうにかなった。


(でも俺以外だとかなりキツイだろうな。体力はともかく魔力が持たない)


 魔力スポットがない現状ではMPの回復は一日で1しかできない。

 それなのに強いスキルほど発動するのに多くのMPを必要とするようなのだ。


 その状態では大量の魔物との戦闘を強いられるダンジョン攻略はかなりの難易度と言わざるを得ないだろう。


(他のダンジョンもここと同じような狭さだと、戦車とかで乗り込むのも無理臭いしな)


 スキルやショップを活用できなければ、大量の銃弾に食料なども持ちながら進むしかないだろう。


 それではどうしても攻略するのに時間が掛かるに違いない。


 そんなことを考えながらも俺はダンジョンを進み続ける。


 途中で二つの脱出ポイントを活性化させたので一時撤退することも考えたが、行けることころまで行こうと考えて。


「……ここが一番奥か?」


 そうやって頑張った甲斐があったらしく、俺は遂にそれまで見なかった巨大な扉の前まで辿り着いた。


 その扉の様相は明らかにボス部屋のような雰囲気を感じさせる上に、中に強敵がいるのが嫌でも伝わってくるので確定的だろう。


(さてと、どうするか)


 魔闘気のクールタイムは明けているし、体力回復薬を始めとしたボス戦に必要と思われるアイテム類も準備はできている。


 ここまでの攻略で多少疲労感はあるが、それでも戦うことは十分に可能だと思う。


 だけど一人でボスに挑むのはリスクがあるのも事実。万全を期すなら疲労が抜けた状態で挑むべきか。


(……ボスがどんな奴かだけでも見てみるか)


 色々と迷った結果、とりあえずいつでも逃げられる準備だけは整えて中を確認することにする。


 ボスがどんな奴か分かれば作戦も立てやすいので、次に繋がると考えたのだ。


 そうしてゆっくりと扉を少しだけ開けて中を覗き込もうとした瞬間、急に体が引っ張られた。


「な!?」


 まるで見えない巨人の手で掴まれたかのように体が宙に浮いて、一瞬で扉の中に吸い込まれてしまう。抵抗する間もないあっという間の出来事だった。


「……なるほど、覗き見は許されないと」


 そして地面に投げ出された俺の前にはボスと思われる全身鎧を身に纏ったオークキングらしき魔物が仁王立ちで待ち構えていた。


 背後の扉は俺が入った途端に消え去ったので、恐らく撤退も不可能だろう。


 つまり俺が生き残るには目の前の敵を倒す以外に道はないようだ。


「ブモオオオオ!」


 そうしてボスと思われる魔物が咆哮を上げながらその手に持つ大剣を振り上げながら突っ込んできて、戦いの火蓋が切られるのだった。

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