第23話 商品追加と国会議事堂で待ち受ける敵
オークの魔石は300Pだ。
それに対して進化したオークナイトの魔石はその十倍の3000Pだった。
(オークナイトを狩った方が効率は良いけど、今の俺だと五体以上の相手はキツイな)
魔闘気込みでも倒し切れるのはその辺りが限界だろう。
逃げるだけなら転移があるので幾らでも可能だが、殲滅しないと生き残った個体にこちらの情報を持ち帰られてしまうことになる。
(仮に黒幕が存在して、そいつが魔物の目や耳を通じて情報収集しているのなら手遅れだろうが、そうじゃないのなら俺という存在と能力についてはまだ正確に把握されていないはず)
あるのかどうかは分からないアドバンテージだが、それをみすみす失うような行為は避けるのが無難だろう。
だからこそ遭遇した魔物は徹底して討伐しているのだ。
と、そんなことを考えながら、今の戦闘でランクアップしていないかと見たステータスカード。
そのショップの項目の下にNEWという文字が現れているではないか。
(新しい商品の追加か? ランクアップした訳でもないこのタイミングで? ……ってこれはオークナイトの装備じゃないか)
オークナイトの装備は、奪って使用した大剣を含めて討伐時に全て消えさってしまっている。
だがどうやらオークナイトを倒したことで、ショップからこれらの武器なども再入手が可能になったようだ。
もっともそれを購入するのにはポイントが必要であり無料ではないのだが。
それも大剣だけで30000Pとそれなりの値段だし。
(買うとしても使ってる武器が壊れたらだな。ポイントは無駄遣いできないし)
現在使用している刀は特殊な効果はないただの鋭くて頑丈なだけもの代物だ。
それでもここまで折れないでくれただけ助かったが、これまで魔物を何体も斬ってきたことで消耗しているのは間違いない。
ただでさえオークなどは肉や骨が分厚いのだから。
「……他の特殊な効果がある武器は10万ポイントもくだらないし、爆弾とかの近代兵器も似たようなもんか」
ショップは本当に多種多様な品揃えとなっている。
武器類は剣や槍、弓のような原始的な装備だけでなく、銃や銃弾、手榴弾などの近代兵器も販売しているようだ。
ただしハンドガン用の銃弾一発に対して数千のポイントが要求されており、強力な銃やそれ用の弾丸ではもっと値が張っている。
これでは自衛隊などがポイントで武器を揃えるのは難しいだろう。
一人の装備を揃えるだけで、どれだけのポイントが必要とされるか分かったものではない。
「それと比べればオークナイトの大剣は格安な方なのか。VIT強化能力があってもこの程度の額だし」
あるいはこうやって特殊な条件をクリアして解放されるアイテムなどは、その条件の分だけ安くなっているのかもしれない。
念のため念話で茜などに確認したが、オークナイトの装備はショップに追加されていなかった。
どうやらオークナイトを倒すか、武器を奪うなどの何らかの条件を達成しないとダメらしいことが分かる。
「……やっぱりないな」
そしてオークナイトを倒した周囲を探してみたが、落ちていたのは魔石だけで御霊石は存在していなかった。
どうやら魔物に吸収された御霊石は、たとえ吸収した魔物を倒しても戻ってくることはないらしい。
だとすれば尚更、御霊石の重要性と確保の必要性が高まるというものだ。
これまでもグールは見つけ次第に仕留めて、御霊石も可能な限り回収していた。だが今後はその保管方法についても考えなければならないだろう。
(俺や茜がインベントリに保管している分は大丈夫だろうけど、自衛隊とかが集めているものが魔物に狙われたら最悪だな)
仮に進化のためにテリトリーを抜け出す魔物が出てきたら非常に厄介である。
人類は襲われれば被害が出て、その結果グールが生まれる。
そのグールを放置すれば進化していくし、かといって倒しても御霊石という他の魔物を進化させるアイテムが発生する。
(この状況は魔物側に有利過ぎないか? いや、チートを使ってるみたいな俺が言うのはなんだけどさ)
異世界からの帰還者としてある種のチート能力を持っているから現状にも対処できているが、それがない人からしてみればあまりにも酷な仕様と言っていいだろう。
なにせステータスなどについてすら何の情報も与えられてない上に、こういったまだまだ発覚していないことが多くあるようだし。
(なんにせよ、情報を集めるのは急務。この分だとスキルのクールタイムが明けたら、すぐに芹沢先生に情報集めをしてもらうのがしばらく続きそうだな)
周囲の気配に注意ながらも、先程のオークと同じように御霊石がどこかに落ちていないか確認しながら進んでいく。
そして国会議事堂がある付近まで来た時、それを感じた。
「……これはいるな、強敵が」
ビリビリと空気を震わせるような覇気。
強者のみが纏う独特の気配が、まだまだ距離がある場所からでも感じられるではないか。
そこからは慎重に進んでいく。万が一でも敵にこちらの存在を察知されないためにも。
今の俺では敵わない可能性もあるので。
そうして国会が視認できる建物の屋上からショップで購入した望遠鏡を取り出して、そちらの方向を監視する。
するとある意味で予想通りの光景が広がっていた。
(入口にオークナイトが二体。しかもあれは門番か)
まるで城を守る番兵のように、国会の入口付近で仁王立ちしている二体のオークナイトが見える。
そしてその奥から、もっと強い気配が漂ってきているのが嫌でも分かった。
(この感じだとオークキングってところか? 今のスキル構成だと勝率は五分ってところだな)
無限の魔力があっても、他のスキルが揃っていない現状ではそれを十全に活用できているとは言い難い。
実際、異世界でも俺が戦えるようになるまでにはそれなりの時間を要したものだ。
なにせ無限の魔力があっても、それをどうやって他のスキルなどに流し込むかなどが全く分からなかったのだ。
異世界人は幼いころから自然と行なっていることでも、こちとら魔力に触れたことも無い現代人である。
だからまずは魔力に慣れるところから始めて、だけどあまりに強大過ぎる魔力のせいで子供でもできるような単純な制御も困難と、初っ端から躓いてばかりでかなり散々な目に遭ったものだ。
他のチート能力ではそういった魔力制御についても与えられている奴だっていたというのに、実に不公平ではなかろうか。
ただ後に魔力譲渡の能力が発現してからは、それも仕方がないことだったと納得するしかなかったが。
それほどまでにこの二つの能力は強力な組み合わせだったのである。
「って、おいおい。この距離だぞ」
肉眼では捉えられない距離から望遠鏡で眺めていたのに、どうやら敵はこちらの視線を感じ取ったようだ。
仁王立ちしていた二体のオークナイトが武器を構えて周囲を見回している。
(これ以上、下手に監視を続けると位置まで特定されかねないな)
まだオークキングクラスの魔物と戦う準備が整っていないのでそれは避けなければならない。
ここは一旦、退いて準備を整えてくるとしよう。
その後、幾つかの安全に転移できると思われる場所にマーカーを設置してから、俺は一時撤退するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます