第83話 三善結生子(大学院学生)[8]
「
これは、さっきのところで、讃州に関係を迫られて、
これも信用できないな。
そんな証拠が残っているならば、讃州易矩という人の性格からしたら、何年か後ではなく、すぐにでも
しかも、この説だと、易矩は以前から永遠寺に出入りしていたことになる。しかし、たとえ
「
瀚倫公とは従達のことだ。姫の父親とも、行喬「乱心」後に姫を引き取って養女にしたとも伝えられている。
そんなばかな、と思ったところで、突然、また背筋から寒気が襲った。
ほかの言い伝えとは切り離して、この岡下の古老の発言だけ読むと、讃州がたびたび永遠寺を訪ねて来たのが、姫が従達を殺したすぐ後のこととも読める。
そして、浄土院の火災が
姫は、多くの伝説では、従達が倒れた少し後に自ら首をくくって自殺したことになっている。
「
姫の存在自体があやふやだが、いつ、どうやって死んだかはさらにあやふやだ。
捕えられたまま、殺されず、生かされていたら……。
永遠寺の地下の石の牢屋に閉じ込められ、「主家の祭祀」にかこつけてときおりやってくる讃州易矩のなぐさみものにされていたのなら!
この讃州易矩という男は真正のSなのだ。
いまプリントされて大机に載っている「
疑いをかけられた家の者を女子どもまで連れて行き、冬に石の上でひと晩正座させ続け、そこに川の水を引き込んで腰まで水に浸したとか、子どもの手足を縛ってつり下げて鞭で打ったとか、女を縛って床に並べてその上で男どもに踊りを踊らせ、女の体を踏みつぶさせたとか、そんなのばっかりだ。そしてそれを見て側近一同で酒を
これが『
とくに、この讃州のばあい、その暴力が女子どもに平気で向かう傾向がある。
温厚で愉快な人物なのに?
いや。表ではそういう姿を見せている人物が、それを見せる必要がなくなったときに、残酷だったり子どもっぽかったりする一面をいきなりあらわにすることは、よくある。
結生子は身をもって知っている。
前の仕事をしていたときに。
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