第8話 天羽佳愛(金融系企業勤務)
契約書を交換して朝の仕事を終わり、取引先の会社から外に出て、スマートフォンを見る。
メールも着信も
その土地が
それに、その重機が落ちた穴は人工物らしく、もしかすると古墳かも知れない、という話が付け加えてあった。
ああ、とため息が出た。でもため息をついているばあいではない。
宮永市から
上司のグループ長にはその場で
「あの、うちの工事現場で何か事故が起こったらしいので、いちど、そこに寄ってから会社帰りますね」
と連絡した。
岡下に家を新築中だという話はしてあったし、次の仕事は午後なので、グループ長は、会社のことは気にしないでまず様子を見てきなさいと言ってくれた。
こういうところは、のんびりした、正社員の人数の少ない地方の支店に転勤になってよかったと思うのだけれど。
お父さんが先に現場に着いてしまうとややこしいことになる。
お父さんはもともとがんこで乱暴なひとだったが、こともあろうに
今度のできごとでは、うちが買った土地で起こったことなんだから、うちが周りの人たちに頭を下げなければいけないのだろう。でもお父さんはそんなことはしそうにない。
佳愛はバイクに乗ると、普段よりスピードを出して、岡下への道を走った。
よく晴れた夏の一日、そんな目的ではなくただツーリングでこの道を走っているのならばどんなに気もちいいだろうと思いながら。
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