第2話 堀川龍乃(中学生)[1]
中学二年生の
――というのは、当然、見せかけであって。
ほんとうは朝からスマートフォンのゲームに熱を上げていた。
「龍」がつく勇ましい名まえをもらったことの影響かどうか、龍乃は格闘ゲームが大好きだった。
一瞬だけど、世界のランキングに名まえが載ったこともある。もっとも、それはまだプレーする人が少なかったときで、ユーザーが増えると、龍乃が自己ベストを更新し続けても世界ランキングには届かなくなった。
でもポイントの差はわずかなのだ。そのわずかの差が埋められないのだが、がんばればそれぐらい逆転できそうな気もする。それで龍乃は日々の
もっとも、このときは、本気でプレーするまでは行かず、畳に寝そべって、格下のキャラを相手に気軽に戦っていた。
大音響とともに床が揺れた。家じゅうのガラスががしんがしんがしんびりびりと激しい音を立てた。龍乃は自分の体も一瞬だけ空中に浮いたと感じた。
それでも龍乃は脇目もふらずプレーを続けた。揺れが収まるのと、龍乃が低い位置で繰り出したパンチが敵をノックアウトするのとが同時だったと思う。再現画面は見ずにアプリを閉じると、龍乃は机にすがりついた。
スマートフォンを投げ出して、机の前の棚から本が落ちてこないように支えている振りをする余裕があった。
さっきの大音響に負けないほど、ということはなかったけれど、ばたばたと大きな音をさせてお母さんが階段を上がってきた。
「だいじょうぶ? 龍乃」
お母さんが早口できく。龍乃は本棚を押さえる手にいっそう力をこめて
「うん」
と答えた。
たいした演技だと自分で思う。
「それより、お店は?」
「まだ開ける前だったからねぇ」
お母さんは答える。
でも、店を開ける前でも後でも、激しく揺れたことに変わりはないから、
がじっ、とスマートフォンが振動音を立てた。
龍乃は、とっさに、あ、ばれたと思った。いまのゲームのスコアが届いたのに違いない。
しばらくお母さんと見つめ合う。スマートフォンをほうっておいて、お母さんにチェックされるといやなので、自分からスマートフォンの画面を開いた。
「だいじょうぶか?」
送り主は、裏の
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