初恋つむぎ【改訂版】
仙ユキスケ
第1話 別れ
この事は誰にも言ってはいけない。
あの子と遊んでいることは絶対に秘密だ。
だって、皆に知られたら、あの子と遊べなくなるから。
(――それなのに、どうしてママにバレちゃったの!?)
目から大粒の涙を流し続ける美優は、母親に引きずられるようにして、町外れにある崩れ落ちそうな粗末な小屋を後にした。美優の背中にはおろし立てで艶がある赤いランドセルが、雨上がりの夕陽を受けて赤く輝いている。美優がそっと後ろを振り返ってみれば、何人もの知らない大人や警察官が、小屋を取り囲んでいるし、誰かのひそひそ声が耳に入って絶望を感じた。
「あの小屋に住み着いていた浮浪者が、小学生の女の子を小屋に連れ込んだらしいよ」
(――っ、そうた、くん!!)
*****
【裏】
この事は誰にも言ってはいけない。
普通の家の美優と、こ汚い俺が一緒に遊んでいることは絶対に秘密だ。
ずっと秘密に、大切にしていたのに……こんな事になるなんて。
どうして俺は、こんなゴミのような家と、ほとんど親として機能していないクソ親の元に生まれてきたんだろう。
壮太は、崩れそうな粗末な小屋の片隅で体育座りをしていた。ゴミしかない汚れた家の中で、何を探しているのか知らないが、まるで犯罪の痕跡を探すかのように見た事ない大人や警察官がバタバタと動きまわっている。
(――美優、暫く会えなくなるのかな。美優と一緒に遊ぶのは楽しかったなぁ……)
壮太は両手で耳を塞ぐと、さらに小さくなるように膝を胸に抱えて蹲った。
そして壮太はこの日、児童養護施設に保護された。
(――っ、美優…………)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます