(2) 森-2

最初期に世界に火が生まれ、火の時代が始まりを迎えた。


力や理念が価値を持ち、人が未踏の地を開拓し、魔女が新たなものを創造する。世界各地には熱が溢れ、魔女達はその灯を絶やすことのないよう、火種から作られた小さな種火を見守り続けてきた。



火は、地を風と共に旅をして、最後は水へと還ってゆく。それは魂の成長とされ、絶えることなく燃やされ続けていると、母から聞いたことがある。



しかしながら結果的に世界は名前とその形を失い、欠片は各地へと散り散りとなってしまった。"森"も例外ではなく、世界の継ぎ目、"裂け目"によって囲われたそこは入り来る達を拒み続けている。



*



私は小屋の外へと足を進めると、慣れた手つきで指笛を吹き鳴らす。森に棲む鳥達が呼応するように周囲に集まると、私はワンドを手にして近くにいた一羽の鳥へと催眠を施した。



使い魔はその名前の通り術者の用事を代行し、知性や感情を持ち合わせることなく術者の命令に忠実に従う。私は鞄に入れた薬草や薬剤類を鳥へと襷掛けると、伝言と合わせて旅立つ使い魔を見送った。



「────どうか、良い旅を」



そう願いを込めて、西の果て、"庭園"と呼ばれる場所へ使い魔を飛ばす。私は採取した薬草や調合薬の対価として、"庭園"から送られてくる雑貨や食料を得て生活をし続けている。



「んー!」



一呼吸したのち背伸びをしつつ、日課を終えた疲労感を解きほぐす。



(────後は書庫に籠るか散策か、どうしようかな)



そうして今日もまた、変わらない一日が過ぎていった。

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