幽霊の使い方

@watakasann

第1話 知っている人

 海が見えたと思ったら、短いトンネルに入ったりを繰り返しながら、小さな電車は、海を背にした無人駅へと向かっていた。

「次の駅よね、でも夜まで長いな」「海で潰せるでしょ、花火もあるし」

「バーベキューのセット持ってきておいて良かった」

 たった一両の電車は、何十年ぶりにかで満員になっていた。色々な所から聞こえる会話は、きっとシャッフルしても別段変わりない内容だった。だが 電車が次第に減速し始めると、乗客の9割以上はさらに興奮し始めた。

「白いワンピース! 白いワンピース、座ってない? 」

誰かの明るい声に、車内は自然な笑いと、乗客の視線は駅のホームのベンチに注がれた。そして到着と同時に

「午前中はいないよね」と言いながらも、人々は荷物とともに降りてしまった。

 駅を出発した座席はがらんどうになり、いつもの静寂と電車の走行音が響き始めると、ぽつりぽつりといるカメラを持った人達は「ヤレヤレ」という顔をした。その中でも特に若いR君は、海を見ながらガラスに向かって独り言を漏らした。


「白いワンピースね、違うよ、あれは白じゃない。白いものを長年置いていて黄ばん色だ」

それは、この騒ぎが起こる、半年前の出来事だった。

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