冷えた藍に沈む実は

おくとりょう

冷えた底より

立ち上る あぶくはいつも きらめいて

私の指を 撫でゆき空へ


熱もなく 無色で 眠る深い赤

溺れる日々の底よりいずる


沼の底 輝く泡に憧れて

動かぬ貝は 深く息吐く


胸の穴 昏くて深くて しずやかで

白い手足は今日も爽やか


高い空 あたしはアシカ 夢を見る

煌めく水面 踊れよ 唄え


縁なぞる 君の瞳が 眩しくて

鏡の代わりに 淵を覗いた


会い朽ちて 林檎が堕ちた 海の底

貝は偽物 ただただ深い


水底みなぞこで 眠る私は人魚姫

そんな夢から 覚めたら地獄


苦くても 吐かない夢の 思い出に

愚かな墨を 塗りつけ染める

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