二人だけの決闘だったのに

@ururu17

ある少女の独白

「紅の竜剣士で攻撃!」

彼はとても嬉しそうに言いながら、彼の目の前にあるカードを横向きにしました。

「今引いたのが竜剣士じゃなければ私の勝ちでした」

この運だけで勝った少年を調子に乗らせまいと私は遺憾の意を示します。

「けどそれが竜剣士の強みだよ。一枚から勝負を決めれるからね」

彼はとても嬉々として彼の使っているカードについて語っています。

その目はとてもキラキラしていて、見ているとこちらも楽しくなってきます。

「ほんと竜剣士が好きですよね、岬君」

「だってかっこいいからね。使い倒さなくちゃ」

そんな彼と二人でこの狭い店の中で対戦する時間はとても楽しい。

「さてもう一回やりましょう、次は私が徹底的に叩きのめしてあげます」

「また竜剣士で僕が勝つよ」

そうしてまた対戦の準備をする。

この小さな誰もいない小さな本屋での小さな決闘は、とても大切な時間でした。

二人で対戦したり周りに何百と並んでいる本の話をしたりする、古本の匂いのする二人だけの世界で過ごしているこの時間が。





だからこそ彼が許せなかったんです。この小さな二人だけの幸せな箱庭から出ていった彼が。

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