第2話 除霊開始
若本さんから送られた地図に従い、訪れたお化け屋敷は黒い淀みのあるオーラを放っていた。
上級かつ相当、人を殺めた幽霊が居るのが一目で解る。この中にいる5人は大丈夫なんだろうか? 怪我をしている可能性があるかもしれないけど命だけは助かってほしい。
「とりあえず、中に入るか。サブロー、準備は良い?」
「バッチリにゃ」
除霊道具諸々が入った荷物を背負ったサブローと共にお化け屋敷入り口に向かうと警備員に止められる。
彼らに私の名刺を見せると若本様から話を聞いておりますと入れてくれた。
お化け屋敷に配属されている警備員は霊能者だ。それなら、彼らが除霊に行けばいい話になるが警備員の仕事はお化け屋敷から幽霊が外に出さないのが仕事。それ以外の仕事は契約違反になるから動けない。もどかしいね!
中に入ると一気に幽霊の気配が濃くなる。若本さんの話だと被害は出てないと言っていたけど、この気配の濃さを考えると・・・・・・。
――しくしくしく。
私の耳に誰かが泣く声が聞こえる。
どうやら始まったみたい。
泣く声に視線を向けると白い服の女が隅で泣いていた。
女に近づくと、くるりと女は私の方を向く。
げっそりと痩せ細った顔は目が飛び出るんじゃないかと思うくらい目が見開いていた。
「どうして泣いてるの?」
女に優しく話しかける。
女は私を凝視しながらか細い声でブツブツと言うだけだったけど、段々と声が大きくなっていく。
そして、
――一緒に死んで!!
そう叫ぶと女は赤い紐を私の首に巻き付けた。
「一緒に死ぬなんてゴメンだよ」
私は首に巻き付いた紐を引き散ると
「お守り解放!!
私の両腕を覆うように猫の手を思わせる赤い鎧が装着される。
そして、赤い鎧の先にある猫の手で女を思いっきり。
「猫ノ拳!! 炎ノ拳・連撃!!」
拳を叩き込んだ。
女は悲鳴を上げながら無害なエネルギー体・人魂へと姿を変える。これで女の幽霊の意識はあの世に行き、輪廻転生を待つことになるだろう。
私は人魂を回収するために触れると頭の中に女の過去が流れる。
どうやら、この女は恋人と無理心中しようとして恋人に逃げられたみたい。その後、自ら命を絶ったけど恋人と死ぬなかったことに執着する余り彷徨い、お化け屋敷にエネルギー源として送られたようだ。
私はハーと溜息を吐いてサブローに回収した人魂を渡す。人魂に触れると幽霊の過去を見る事になるから苦手だ。
見習い霊能者だった時に、過去を見て同情してしまい命を奪われかけた事が経験のせいだ。それ以来、師匠や姉弟子から絶対に同情はするな引っ張られると口酸っぱく言われ続けている。
「さて、一階のフロアを見て回ってから二階に行きますか」
「了解にゃ!」
サブローの元気な返事と共に再び歩き出す。
幽霊を除霊したとは言え、気配はまだ濃い。
低級を1体倒しただけなのだから変化はないのは当然か。
一階の気配を辿ったところ、低級クラスの幽霊しかいない。
このお化け屋敷は三階、地下一階の構成になっている。
幽霊はジメッとした場所を好む性質がある、これはクラスが高ければ高いほど好みやすい。迷い込んだ上級は地下に居る可能性は高い。確認したいところだけど、その前に研修に来ている5名の救助だ。
人の死を見るのは嫌だ、人命優先。それにもう人が死ぬ場面なんてもう見たくないから。
「犠牲者は出さない、絶対に」
サブローに聞こえない程度に声に出して誓う。
あの時の悲劇をもう繰り返さない為に。
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