第19話 図書室を楽しむ

 昼食が終わり、リジと共にアリシティア様の所へ向かっていた。

 この時間は自室にいるとリジが教えてくれたのだ。

 勉強が終わったあと私は図書室に向かいたいとリジに伝えたところ、昼食を終えた後にアリシティア様に許可を取らなくてはいけないと言われたのだ。

 この世界では本は高価なものらしく、王族の一家か、その許可を得たものしか図書室に入れないらしく、私の婚約はまだ正式なものではないので、許可が必要らしい。


 「アリシティア様。少しお時間頂いてもよろしいでしょうか。」


 私は軽くアリシティア様の自室の扉を叩く。


 「ええ、どうぞ。」


 許可が出たのを確認し、リジが開けてくれた扉から部屋に入る。

 中には書類仕事のような事をしているアリシティア様とその後ろにリザが控えていた。


 「どうしたのかしら?

 何か不具合でもあった?」


 部屋に入った私達にアリシティア様が問いかけてくる。

 私はそれに答え、要件を伝える。


 「いえ、国王様やアリシティア様のお陰で不自由なく過ごさせて頂いてます。

 本日は図書室への入室許可を頂きたいと思い参りました。」


 「図書室?何か勉強でもするのかしら?」


 「はい、まあそんなところですね。」


 間違ってはいない。

 私はこの世界の歴史や土地のことについて調べに行くのだ。

 そのついでに物語集などを見つけられるかどうかというところだ。


 「そうね…それならばリザを貴方に付けましょう。

 彼女は本の扱いや蔵書場所について教えてくれるでしょう。

 リジは交代で私に付きなさい。」


 「はい。かしこまりました。」


 二人の声が揃い、場所がするりと入れ替わる。

 それと同時にアリシティア様から小さな紙を渡される。


 「これが入室許可証になるわ。

 無くさないようにリザに預けておきなさい。」


 私は受け取った紙をリザへ渡し、アリシティア様へと向き直る。


 「ありがとうございます。」


 「良いのよ。学ぶことは良いことだもの。」


 私は扉の前まで戻り、振り返りお辞儀をする。


 「失礼します。」


 私の挨拶を合図に行きとは違いリザが扉を開いてくれる。

 私は扉を出た後、もう一度お辞儀をして退出する。

 リザが扉を閉じて私の方を向くとニコリと笑いかけてくる。


 「では図書室に向かいましょ~かぁ~。」


 見た目道理のおっとりした声で私に話しかけ、ゆっくりと図書室へ案内してくれる。


 ………


 「さあ着きましたよ。」


 着いたと言われたそこは大きな扉の前だった。

 リザは私が扉を確認したのを見ると、扉に近づき、アリシティア様から貰っていた紙を扉の前に当てた。

 すると、模様に沿って赤い線が走ったあと、ゆっくりと扉が開いた。


 「どうぞ、お入り下さい。」


 扉の模様に沿って光る様はまるで魔法陣のようだった。

 とにかく、すごくかっこいい。


 だが、この感情はそれ以上の感動で押しつぶされた。

 扉が開いたその先には人生で見たことがないほどの本や書類の数々がきれいに敷き詰まっていた。

 私は、前の世界では本が好きで学校の休み時間や家でも本を読んでいる生活を送っていた。

 こんなに本が積み重なっているなんて…

 ここは天国か!


 って、大きい図書室に浸っている時間はない。

 私は調べ物をするためにここへ来たのだ。

 とはいえ、ここでの本の分類や並びがよくわからないため図書室に詳しいというリザに聞いてみるしかない。

 扉がしっかりと閉じているか確認して私の方へ振り返ったリザに質問する。


 「私ここには調べ物をするために来たんだけど、私の前にこの世界に来た異世界人のことについて調べたいの。

 何処かにない?」


 「異世界からいらっしゃった方についてですかぁ…

 詳しくは調べられないと思いますけど…」


 そう言いながらリザは沢山並んだ本棚の一角に迷わず進んでいく。

 そして、そこから3冊の本を持って手前にあるテーブルへと運んできた。


 「これしか異世界人の事が書いてある本は無いですね~」


 と、言いながらそれぞれの本に書いてあることの説明をしてくれる。

 1つ目は、昨日ミランダが話してくれた四季がある土地の成り立ちと特徴が書かれたもの。

 2つ目は、異世界人が書いたと言い伝えられている物語集。

 3つ目はこの世界で子供の頃に必ず読むと言われている簡単な物語集で、神様の話や魔法の話の中に異世界の話が書いてあるらしい。


 「思っていたより少ないですね。」


 「そ~ですね~ずぅーと昔のことなので、記録があまり残っていないんですよ~

 でも、この子供向けの物語集を読むから異世界の存在はほとんどの人が知ってるんですよ。」


 「じゃあまずこの本から読んだほうがいいですね。」


 私は目の前に置いてあった子供向けの物語集を手に取った。

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